甘口辛口

週刊誌に見る人間喜劇(隠居の放談)(その2)

2007/9/16(日) 午後 0:21
熊─えらいことになったねえ。安倍首相が辞意を表明したじゃないか。ご隠居は、こうなることを予想していたかい?

隠居─誰も予想していなかった。だから、新聞などに「乱心」とか、「錯乱」という言葉が氾濫したんだよ。

熊─週刊誌には、随分ひどいこと書いているのがあったぜ。「こんなヤツを首相にしたのは誰だ」とかね。

隠居─いまになって考えれば、安倍首相の言動は最初からおかしかったな。彼は「戦後レジームからの脱却」というけれどね、こう言うのが極左の革マル派ならわかるよ。だが、自民党員である安倍晋三がそんなことを言うのは滑稽なんだな、戦後レジームを作ってきたのは自民党じゃないか。それに、戦後体制の根幹部をなす日米安保条約を改訂・強化したのは、首相の祖父の岸信介だからなあ。

熊─そういえば、そうだ。

隠居─首相辞任の理由にしたって、訳が分からない。彼はテロ特措法を延長しないと、「国際的な公約」をやぶることになるというんだが、どこが「国際的公約」なんだい? 安倍晋三が、いまや落ち目のブッシュに「テロ特措法を通します」と約束しただけじゃないか。国際公約どころか、安倍とブッシュの間の個人的な約束に過ぎないんだよ。

熊─しかし、アメリカのご機嫌を損じたら、いろいろまずいことがあるんじゃないの?

隠居─いまや、アメリカのいいなりになっている国は、ほとんどなくなっているんだ。まだアメリカに尻尾を振っているのは、日本くらいのものだよ。

熊─すると、テロ特措法なんか、あまり重要視しなくてもいい・・・・・。

隠居─そうなんだ。首相はテロ特措法を通したいと思うと、これを国政の最重要課題であるかのように騒ぎ立て、そのうちに、自分でもこれを重要法案だと錯覚してしまう。「小心翼々」という言葉があるが、彼は極め付きのチキンハートなんだな。こんなものは、野党の反対で法案の再延長が不可能になったとアメリカに通告すれば、それで済む話なんだ。

熊─チキンハートだから、宗教に頼ることになるんだな。ご隠居は、「週刊文春」の今週号を読んだかい。安倍晋三は、新興宗教をいくつも信じているそうだぜ。一番驚いたのは、安倍家が代々、統一教会と深い関係にあるということなんだ。岸信介も、安倍晋太郎も、統一教会の大会に出席していたそうじゃないか。

隠居─安倍家が統一教会と深い関係にあることは、公然の秘密なんだよ。そういう安倍晋三を国粋派・民族派の右翼がかつぐんだから、おかしな話さ。

熊─彼が信じているのは、統一教会だけではないらしい。「週刊文春」には、こう書いてあるから、読んでみるぜ。

< 新生仏教教団を筆頚に、
 こうした宗教団体が、安倍
 を支えてきたのは事実だ。
 それに応えるため、安倍は
 この種の宗教団体の会合に
 進んで出席してきた。
 
 安倍は、そうした団体か
ら贈られる「御守」や「仏
像」、祈祷済みの「御礼」
や神事に使うのであろう
「鏡」などを大切に保管し、
日常的に祈りを捧げてい
る。

首相執務室の机は、そ
うしたものでいっぱいにな
っている。>

こんな調子で、彼はいくつもの宗教を信じて、神頼み、仏頼みの毎日らしい。

隠居─ほう、驚いたな。一国の首相が、宗教狂いだとはね。
ここに、首相の資質について触れた新聞の社説があるから、今度は私がその内容を紹介するよ。首相に必要なのは、判断力、洞察力、バランス感覚だが、これらは深い知性によって背後から支えられているというんだ。いくつもの新興宗教にトチ狂っている首相に、この種の知性を期待するのは、そもそも無理な話だったんだな。こういう首相を選んだ自民党員の「任命責任」も問われなければならないよ。
  
熊─新しい首相に替われば、少しはよくなるんじゃないか。

隠居─佐高信は、「麻生太郎は受け狙いで思ったことをそのまま言ってしまうし、福田康夫は本心と違うことを平気で言うことに磨きをかけている」と酷評しているけどね。二人を比較すると、麻生は、小泉・安倍にぴったり寄り添ってきたタカ派だからどうしようもないが、福田の方はアジア外交を重視する穏健派だから、こっちは多少期待できるかもしれない。

熊─隠居は、福田首相を歓迎しているわけかい?

隠居─イヤ、とにかく私は、安倍首相が辞任するのと一緒に、その取り巻きの右傾学者や評論家が消えてくれるのがうれしいんだ。彼らは、とびきり頭が悪い上に、揃って下劣な品性の持ち主ばかりだからね。ところで、今週号の週刊誌には、ほかに面白い記事があったかね。舛添要一はどうなった?

熊─舛添関連の記事の見出しは、こうなっているよ。<被害女性が証言「10人の婚約不履行」と「持参金タダ取り」>

隠居─わかった、わかった。川柳欄はどうだね、面白いものがあるかね。

熊─「オフクロは 喪服を着ても そそらない」

隠居─ぷうっ。なんだい、そりゃ。

熊─この週刊誌は置いていくよ。ご隠居は、多摩川のホームレスに関心を持っていたろう。これには「多摩川水没観察記」という三枚続きの写真が載っているからね。

隠居─ありがとう。ホームレスは、現代のディオゲネスになりうる面々だからね、無関心ではいられないんだ。