甘口辛口

小沢一郎の悪い癖(隠居の放談)

2007/11/9(金) 午後 4:11
<小沢一郎の悪い癖>

熊さん─民主党のゴタゴタも、やっと片づいたようだね。

隠居─うん、また小沢一郎の悪い癖が出て、政界はじめ国民もすっかり引っかき回されたな。

熊さん─悪い癖って、何だい?

隠居─直ぐに図に乗る悪ガキのイバリ癖さ。ヤツも、さすがに今度は反省したらしく、「年甲斐もなく感情に走って、とんでもないことをしでかしてしまった」と悄然としているそうだがね。

熊さん─確かに、彼には調子に乗って、いい気になるところがあるな。

隠居─そもそも、ヤツが自民党内で力をつけたのは、金丸信に忠勤を尽くしたからなんだ。田中角栄がロッキード事件でつまずいてから、その一の子分だった金丸信が代貸になって、権勢を振るうようになった。金丸というのは、哲学も何もない、まあ、ヤクザみたいな男でね、自分の役に立つ者だけを露骨に可愛がる。だから、ハマコーのような代議士も近づいてきて平身低頭して犬馬の労を尽くす。すると、金丸は彼を予算委員会の委員長にしてやっている。ハマコーは、すぐにボロを出して解職させられてしまうがね。

熊さん─あのハマコーもねえ。

隠居─金丸の周りには、おこぼれにあずかろうとしてロクでもない代議士たちが集まってきたが、その中で小沢一郎は出色の活躍を見せたんだ。小沢は、金丸の意志とあれば万難を排して実行につとめたんだよ。悪ガキの小沢は、同じ気質の金丸の気持ちが分かるんだ。小沢一郎のことを「剛腕」だというだろう。あれは、金丸の威光を背景に、彼が党内で無理なことでも強引に押し通したことから来ているんだ。

熊さん─彼が若くして、自民党の幹事長になったのも金丸のおかげなんだな。

隠居─幹事長になったら、図に乗ってとんでもないことをやりはじめた。党を代表して、総裁候補の資質を調べると称して、総裁の候補者を幹事長室に呼びつけて口頭試問をしたんだ。この時、呼びつけられた一人の宮沢喜一なんかは、自分の息子のような小沢に向かって、「大幹事長」などとお世辞を使っていたよ。

熊さん─しかし、その金丸信もリクルート事件で失脚したろう?

隠居─そうなんだ。後ろ盾を失った小沢への風当たりがきつくなってきたから、彼は自民党を飛び出して、反自民の諸勢力を糾合して新生党を作り、自民党から政権を奪取した。これは、世界中を驚かせる事件だったんだよ。日本という国は、自民党による一党支配国家で、政治的な後進国だと見られていたのに、政権交代が実現したんだからね。各国は揃って細川政権に好意的だったし、国内の評判もよかった。だから、うまくやっていけば、この時から二大政党対立時代がはじまったはずなんだ。それを、小沢一郎がぶっ壊してしまった。

熊さん─「壊し屋」の誕生だね。

隠居─後ろ盾の金丸を失った小沢は、「剛腕」を正当化するために原理・原則を掲げるようになった。彼は二大政党対立の時代を実現すべきだ、そのためには小選挙区制が必要だと言い出して、自民党と協力して小選挙区制を実現させたが、これもバカな話でね。新生党に集まった社会党などの中・小政党は中選挙区制のもとで伸びてきたのだから、小選挙区制に切り替えればこれらの政党が弱体化して、自民党が優位になるに決まっているんだ。

熊さん─つまり、ご隠居は、こう言いたいんだろう。新生党が小選挙区のもとでも、自民党と対抗できるようになるまで中選挙区制を続けるべきだった、と。

隠居─小沢はわがままでせっかちだったから、待ちきれないんだな。そのうえ、社会党系の議員が目障りだというんで、彼らを党から追い出してしまった。自民党は、この追い出された社会党と連立を組んで、政権を奪取したんだ。小沢という男は、二大政党対立の端緒を作り出しながら、イバリ癖を出して二大政党対立の実現を不可能にしてしまったのさ。ヤツの罪は深いよ。

熊さん─成る程なあ。彼のやることは、昔から同じなんだな。参議院選挙に勝利して民主党躍進の端緒を作り出しながら、民主党に致命傷に近い打撃を与えてしまったからね。自民党の無能は救いがたいと言っておいて、今度は民主党はもっと無能だ、選挙をやっても勝てっこないと言い出すんだからひどい話だよ。

隠居─でも、救いはあるね。これまでヤツは、自分が間違ったことをしても謝罪したことがなかった。朝青龍や亀田パパと同じだったんだよ。しかし、今度はちゃんと謝っているからな。傲慢不遜な小沢も、世論の反撃を受けて、このままでは自分の政治的生命が失われることに気づいたんだ。

熊さん─それにしても民主党もだらしがないな。小沢が辞任するといったら、どうぞご自由にと突っ放してしまえばいいじゃないか。

隠居─民主党の幹部たちは、小沢が配下を引き連れて脱党して自民党と連立を組むことを恐れていたし、新しい代表を選ぶ選挙戦になれば、党内の路線対立が明るみに出て国民から愛想を尽かされるだろうと警戒していたんだ。

熊さん─「大連立」のフィクサーは、ナベツネだというじゃないか。

隠居─ナベツネの評判が落ちたことも、救いの一つだね。あれは国民のためとか、社会正義のためとかいって、いろんなことに口出しをしているが、ヤツは読売新聞という公器を武器にして私情を実現しているだけだよ。そのいい例が、彼の言い出したプロ野球改革案だ。蓋を開けてみたら、何から何まで巨人軍を強くしたいという私情に基づくものばかりだった。ナベツネが新聞を利用して、「大連立」の宣伝につとめたのも、上げ潮に乗っている民主党の勢いを阻むためだったんだ。今度の問題で、ナベツネが読売新聞を政府の御用新聞にしようとしていることが分かったのはいいことだった。ヤツも小沢と同じで、自分の力を過信して、図に乗って突っ走って失敗する癖があるのさ。

熊さん─ご隠居は、相変わらず口が悪いね。

隠居─年寄りが何を言っても、世間じゃあんまり気にしない。老いぼれの悪たれ口と取るからね。私はそこのところを利用して居るんだよ。これからも精々悪口を言わせてもらうよ。