甘口辛口

隠居の放談(同類項探索)

2008/11/17(月) 午後 11:59


(同類項の人相)

<隠居の放談(同類項探索)>


隠居−また、政治家の人相について話せというのかね? こんな話ばかりしていると、こっちの知能程度まで疑われるが──まあ、いいか。

田母神空幕長の写真を新聞で初めて見たときに、小泉純一郎の顔に似ているなと思ったよ。その後、彼の投稿した論文を読んで、似ているのは人相ばかりではない、考え方も性格もよく似ていると思ったな。

小泉というのは、冷たい男でね、あの靖国参拝がいい例だぜ。彼が参拝を強行したお陰で、中国や韓国との関係がおかしくなって、日本はどのくらい国益を損なったか分からない。では、彼は何のために参拝に固執したかといえば、自民党総裁選挙で橋本竜太郎に勝つためだったんだ。右傾化している自民党内の空気を読んで、票稼ぎのために、「いかなることがあっても、8月15日には靖国神社に公式参拝する」言い切ったんだ。もっとも、「8月15日」に参拝したことは一度もなかったがね。

それから、「構造改革」だろ。あれは弱肉強食をシステマ化して弱小企業を淘汰する政策なんだよ。彼の頭の中には、日本の将来のことも一般庶民のことも、何もないのさ。あるのは、打算と我欲だけなんだな。

田母神空幕長も、いびつにひん曲がった信念に固執するタイプだ。

問題の論文を読めば、あまりのバカバカしさにため息が出るだけだよ。彼は日本に侵略国家だというぬれぎぬを着せたのは、蒋介石とルーズベルトだと言うんだ。この二人は、自分の国に日本軍を攻め込ませたというのだから驚く。

これは、「強盗に入られたのは、その家の主人が招待したからだ」というのと同じような話じゃないかね。成る程、日米開戦については、昔からルーズベルトによる謀略説というのが流布されて来た。ルーズベルトは日本と戦争をしたかったが、自分たちの方から手を出すと非難されるから、日本から先に攻撃するように仕組んだというんだ。彼がいくら悪魔的な政治家だったとしても、日本軍に攻撃させるために、わざと真珠湾の防備を手薄にしておいたなんて信じられるかね。そうだとしたら、ハワイ住民の生命財産を犠牲にして開戦に持ち込んだということになるよ。

そこで田母神が持ち出した小道具は、コミンテルン(国際共産党)の陰謀というオハナシなんだ。マルコポーロ橋(盧溝橋)で演習中の日本軍に銃弾を撃ち込んだのもコミンテルンの仕業だし、ルーズベルトの対日強硬路線もコミンテルンにそそのかされたからだというんだな。こういう説を持ち出して、蒋介石・ルーズベルト犯人説を補強した訳だ。

田母神理論なるものは、一昔前の「赤狩り」理論の焼き直しに過ぎないのだよ。東西冷戦期には、何でもかんでも悪いのは、共産主義のせいだという説がまかり通っていたんだ。

自国を正義の国にして、まわりをみんな悪党国家にする歴史観はプロレス史観と呼ぶべきだね。プロレスでは、悪役と善玉が最初から決まっているだろ。幼稚な頭を持った人間は、自国は何時でも善玉で、悪いのは他国だと信じ込むものさ。そして少しでも自国の過ちを指摘する学者などを見ると、自虐史観の持ち主だと騒ぎ立てる。

田母神は、インターネットで調べたら自分を支持する者が多かったと威張っていたが、何時の時代、どこの国にも偏執的な愛国主義者がいて、自国の行動は常に正しいと言いたがるものだ。ヨーロッパにも、スキンヘッドの排外主義者がいるしね。そんな連中に支持されたところで自慢にはならないよ。

安倍晋三も、プロレス史観の信者だから、自衛隊内部の右翼的偏向を放任していた。田母神が自衛隊航空部門のトップになったのも、安倍内閣時代だったんだぜ。

浜田靖一防衛相は、国会答弁で田母神空幕長のことを「非常にうぬぼれの強い人物だ」と評していたね。阿呆な人間ほどうぬぼれが強くて、自分のでっち上げたガラクタ理論に固執するものなんだな。彼らは自分の言説がいかに近隣諸国の感情を害しているか、そして日本への警戒感を強めているか、分からないんだ。彼らは国益を大きくそこないながら、自分では国家に貢献していると信じて疑わないんだからね。

話を人相の件に戻すと、小泉純一郎と田母神前空幕長に共通するのは、モノマニアックな眼差しなんだ。自説に固執して反省することを知らない偏執狂の眼差しだよ。それでも小泉の方は、目色に多少の柔軟性が感じられるが、田母神の目には、ひん曲がった狂信があるだけだ。

隠居−麻生首相が無学で、漢字を知らないという話かい? 麻生の同類項ということになれば、それはブッシュだろうね。

ブッシュ大統領が無学なことは、天下周知の事実だよ。特に目立つのは世界地理に関する知識の貧しさで、大統領に当選するまでは中学生の水準にも達していなかったといわれる。世界の地理にうといのは、新聞をろくに読んでいなかったからだよ。

そんなブッシュが、民主党のインテリタイプの候補者を破って大統領になったのは、父ブッシュに続く二代目であり、親しみやすい人柄のためだったらしい。この辺は麻生太郎と似ているじゃないか。麻生も二代目だし、気さくで親しみやすい人柄だと見られている。

ブッシュも麻生太郎も、尊敬される政治家になる代わりに、愛される政治家になることを選んだ。尊敬される政治家になるには、学識や教養に裏付けられた見識が必要だが、勉強嫌いの彼らはこの路線ではなく、相手と一緒に酒を飲んで意気投合することで皆に愛される路線を選択したのだ。おかげで、ブッシュは底抜けの酒飲みになり、麻生太郎もバーをはしごすることを喜びとする飲み助になったんだ。

無学という点で思い出すのは、細木数子だね。彼女は著名な漢学者安岡正篤の薫陶を受けて、中国古典に精通していると触れ回っていたが、可哀想なくらい無学だった。彼女の出演するTV番組を4、5回ほど見たことがあるが、そのたびに彼女は漢字の熟語を読み間違えたり、意味の取りそこないをしていたよ。

細木数子のように半可通の知識を振り回して恥をかくより、平気で無学をさらけだすブッシュや麻生の方が賢明だとはいえるね。

ブッシュも麻生太郎も、愛される政治家になろうとして一応成功した。だが、そのことで自分がその気になりさえすれば、みんなを籠絡できるという妙な自信を持つってしまったのは、失敗だった。ブッシュがアメリカ経済だけでなく、世界経済をメチャメチャにしてしまったのは、この妙な自信過剰のためなのだ。政局より政策をと称して打ち出した麻生の緊急不況対策が、来たる選挙をにらんでの買収工作になってしまったのも、自分の人気を過信したための失策というしかないな。