甘口辛口

同棲男による女児虐待

2009/4/29(水) 午後 0:42
<同棲男による女児虐待>


大阪の小四女児が、母親の同棲相手である38歳の男に虐待されて死ぬという事件が起きた。この種の痛ましい事件は、応接にいとまがないほど頻繁に起きている。そのため、人々は事件が起きても、(ああ、またか)と、暗い気分になるだけで深く考えることなく見過ごしてしまう。

世人が事件にあまりタッチしたがらないのには、被害を受けた子供の母親が男の虐待を傍観しているだけでなく、時には男と一緒になってわが子を虐待しているという事情がある。男と同棲中の母親は、男がわが子を虐待し始めたとき、男を取るか、子どもをとるかという選択の場に立たされるのだが、結局男の方を選んでしまうのだ。

内田春菊の母のように、男を引き留めておくために娘を提供するものさえある。インターネットで内田春菊「ファーザーファッカー」の項をひくと、以下のような記事が出てくる。

<長崎港を望む50段坂。急な階段を上りつめた辺りに、その「売春宿」はあった。おかみは実の母で、ただひとりの客の男は、育ての父だった。

ほとんど寄り付かなくなっていた実父と入れ替わるようにやってきた男は家長の座につき、家庭を支配する。愛人であるはずの母は殴られ、子どもたちは見ず知らずの男を「お父様」と呼ばされた>

そして内田春菊は、母親の手で義父を客にする娼婦に仕立て上げられる。

頻発する同棲男による児童虐待とか、内田春菊のケースを見ると、虐待事件が起きる原因は、かかって母親にあるように見える。母親が取りすがるようにして男にしがみつくから、男はつけあがって虐待に走るのだ。そして、母親が男に執着するのは、愛情のためばかりではないのである。

「週刊朝日」の、

    <「売春」に走る「崖っぷち」シングルマザーたち>

という特集を読むと離婚や死別で夫と別れた女たちが、絶体絶命のピンチに立っていることが分かるのである。

フリーライターの鈴木大介は、「出会い系サイトで売春している30〜40代の女性の多くはシングルマザーだ」という話を聞いて取材を開始する。彼は出会い系サイトの広告を見て取材依頼のメールを送り、自分はシングルマザーであると認めた15人について調査をはじめた。

彼女らは、出会い系サイトに、こんな風な広告をだすのである。

―――割り切って会える人、いたらお返事ください。希望は別2―――

「割り切って云々」は「金を払ってくれる人」、「別2」は「ホテル代別2万円」の隠語なのである。

シングルマザーが、こうした広告を出さざるを得ないところまで追い込まれるのは、子どもを抱えたこぶつきの身では、働こうにも仕事口は皆無に近いからなのだ。小泉改革以前は、「シングルマザーは、まじめに働いてくれるから安心だ」といってむしろ歓迎され、2〜3年で正規雇用の道が開けたのだが、小泉改革以後は子連れのシングルマザーは派遣会社からも敬遠されるようになったのである。

ハローワークでは、彼女らに「まず、資格を取りなさい」と助言し、保育士、看護師、介護福祉士などになることを勧める。だが、苦労して資格を取ったところで、バツイチで子持ちということになれば、雇ってくれるとこなど何処にもない。

そこで食べるものにも事欠き、食事はパンの耳と百円ショップの餃子でおかゆを作って済ますことになる。パンの耳は、パン屋でもらうと店員にイヤな顔をされるのでペットショップに行って買うのである。

かくて彼女らは、最後の手段として体を売ることになる。こんな暮らしをしていると、自己嫌悪の念がどんどんふくらんでいって、とんでもないことをするようになるのだ。

 茨城県中部に住む清原加
奈さん (仮名・29歳)は、
毎日、手首を切るのをやめ
られない。

「相手とホテルに入って、
そこのトイレで切ったこと
もある。泣き叫ぶ子供たち
の前で、切ってしまうこと
もある。どんなに子供にと
ってショックなことかわか
っていても、耐えられない
んです」

惨憺たる日々が続くために、心を病んで精神科に通っているシングルマザーが驚くほど多い。

    
 山梨県の白石陽子さん
(仮名・29歳)も、出会い
系で会う男から得るカネの
みが、息子を育てる資金だ。
息子の前で手首を切ったり、
首つり自殺未遂をしたこと
まである。それでもやはり、
「子供が差別を受けるか
も」という不安から、陽子
さんは近所の病院ではなく、
1時間もかけて神奈川県内の
精神科に通い、診療を受け
ている。

―――シングルマザーたちが置かれているこうした現実を見ると、わが子が虐待を受けるところを見ながら、なぜ彼女らは男と別れようとしないのか理解されてくるのだ。男は生きて行く上で、最後の頼みの綱なのである。この綱が切れてしまったら、飢餓と売春の生活に戻るしかない。

男は、女が必死になって自分に取りすがってくるから何をしても許されると自信を抱き、目障りな連れ子に平気で暴力を振るうようになる。精神的にどん底まで落ちた母親の中には、男の関心をひこうとして、一緒になってわが子を虐待し始めるものまで現れる。この世の地獄である。

大阪小四女児殺人事件で逮捕された母親の顔は、まさに地獄の苦患を受けている人間の顔だった。