甘口辛口

チンパンジーと愛国者

2012/9/23(日) 午後 7:28

見田宗介と大沢真幸が未来社会について論じた「二千年紀の社会と思想」という本を読んでいたら、二人は対談の中でチンパンジーと人間を比較していた。

チンパンジーは、普段は自分たちのテリトリー内で行動している。そのチンパンジー集団が他の集団と出会ったらどうなるかといえば、必ず喧嘩を始めるそうである。喧嘩以外の行動に出ることは、絶対にありえないと二人は保証している。

チンパンジーは、自分たちの集団の赤ん坊を大事にするが、他集団のチンパンジー・べービーに対してきわめて冷淡で、赤ん坊が木から落ちようが、ほかの動物に食べられていようが、平気で「高みの見物」をきめこんでいる。ところが、人間は、違う。自分たちとは縁もゆかりもない外国人の子供でも、ビルから落ちそうになっていたら、すぐに抱き留めて助けてやる。私たちが、人類の未来に希望を持ちうるのは、人間にはこうした特質があるからなのだ。

ところで、人間の世界にも、自国民には愛情を示すけれども、他国の人間にはやたらに攻撃的になるグループがある。「愛国者」と称する人種がそれだ。彼らは、まだチンパンジーのレベルから抜けきっていないのである。私たちは、こういう彼らを、類猿人とか亜種チンパンジーと呼ぶべきかも知れない。

尖閣諸島問題で抗日運動を激化させる中国人や、竹島問題・慰安婦問題で日本に噛みつく韓国人は、チンパンジーに近い行動を示している。だが、これは大目に見てやらなければならない。自分の国が日本から侵略された過去を持っているからだ。隣人が土足で自分の家に踏み込んできて、家の中を散々に荒らしていったとしたら、被害を受けた一家が加害者に100年たっても消えない恨みを抱くのは当然のことではないだろうか。

しかし、中国の江沢民や韓国の現大統領のように、人気取りのために日本に対する国民の憎悪を煽るやからがいることも事実で、私たちは、こうした面々を許してはならない。彼らは、一国の指導者として不適当であるだけでなく、人間としても落第だからだ。中国の周恩来、韓国の金大中が、国民の間に日本憎しの感情が満ち溢れていた戦後間もない時期に、あえて日本を擁護し、日本と友好関係を樹立することに全力をあげたことを思いだすべきである。

中国国民、韓国人が日本を侮蔑するのには、別の理由がある。中国・韓国の経済が好調で日本を追い越しつつあることがその理由だ。自分の国が、先進国の技術を吸収して急成長を続けている時期には、どこの国民も思い上がって天下を取ったような気分になる。日本も、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」といわれた経済成長期には、アメリカやヨーロッパ諸国を見下して、悪ガキのように振る舞っていたものだった。今や、日本に代わって、韓国や中国が悪ガキ時代に突入し、領土紛争や貿易問題で横車を押しているのである。

これに対して腹を立て、日本人が中国・韓国を罵倒し、彼らに制裁を加えるべきだなどといいだしたら、今度はこちらが亜種チンパンジーになってしまう。先日、テレビを見ていたら、喧嘩早さに関する世界各国民の順位が出ていた。それによると、日本国民は調査対象になった数十カ国のうちで最下位だった。日本人は世界に冠たる辛抱強い国民らしいのである。

だが、今日の「そこまでいって委員会」というテレビ番組を見ていたら、田嶋陽子を除く出席者の大部分が亜種チンパンジーになって、口々に中国を罵っていた。そして、その後に、返す刀で政府の軟弱外交を非難するのである。相変わらずの光景だった。

世界各国の歴史を見れば明らかだが、「愛国者」が祖国に貢献したケースは僅かしかなく、その大部分は、自国を戦争に追い込んで国を滅ぼしている。日本が太平洋戦争に突き進んだのも、「愛国者」たちが「暴支膺懲(乱暴な中国を懲らしめる)」の方向に世論を誘導して行ったのが手始めだった。そして、彼らは、戦争が敗色濃厚になると、「一億玉砕」を唱えて、実際に日本を滅亡に追い込むところだったのである。

日本人が警戒すべきは、「自虐史観」の所有者ではなく、自称「愛国者」たちなのだ。