衛星放送の「朝日スターチャンネル」には、「噂の真相」という面白い番組がある。
コメンテーターが各界の裏情報を持ち寄り合って、辛口の合評をするという内容なのだが、月に一度しか放映しない番組なので、どうしても見逃してしまう。だが、今回は、二月分の「噂の真相」を全部見ることが出来た。テーマは、「安倍内閣論」。
最初に学者一名評論家四名からなる出席者が、安倍首相に対して優・良・可三段階の成績をつける。全員が可ないし落第点の不可をつけていた。出席者が共通してあげていたのは、安倍首相やそのお仲間が、苦労知らずのお坊ちゃんたちで、国民生活の実態を知らず、切実な政治課題を放置して省みないでいることだった。
彼らは年金問題や格差問題から目をそらし、教育基本法や新憲法制定など宙に浮いたような問題を追い回している。地道な政治をする能力がないから、「戦後レジュームからの脱却」とか、「美しい日本」とか、空疎な形容詞でしかないことを口にして日を過ごしている。
実際、安倍晋三と彼を囲む大臣たちの知能の低さは、驚異的ですらある。
出席者の一人によれば、安倍首相は人から教えられたことをテープレコーダーのように繰り返すことが出来るだけで、自ら考えて独自の判断を下す能力はゼロに等しいという。こういう安倍のまわりに集まってくる面々だから、その頭の中身は推して知るべし。
では、末期的な政治状況を改めるためには、何をしたらいいか。
この点でも、多くの出席者の意見は共通していて、議員の世襲制が槍玉にあげられた。小泉前首相も安倍首相も三世議員だが、三世代にわたって議員だったということは、百年間、一家が国の給付で暮らしてきたことを意味する。一世紀ものあいだ、国会内での合従連合に明け暮れ、政治を食い物にしてきたのだから、小泉や安倍らに、国民の生活実態が分かるはずはないのだ・・・・。
ということで、議員の世襲と多選を禁止したら、日本の政治も少しはよくなるのではないかという意見が出席者の賛同を得ていた。だが、座談の席上で世襲禁止を口にすることはたやすいが、実現の可能性はゼロに近い、特に日本においては。
ブッシュの例を見るまでもなく、外国にも政治家の世襲はある。しかし、発展途上国を含め世界の多くの国々では、神官や僧侶が世襲というケースはほとんどない。神殿や教会は教団や国家が所有し、それらには強い信仰を持った若者たちが厳しい修行の後に赴任してきて、信者の指導に当たるのである。
日本人の宗教心が薄いと言われるのは、寺院や神社が個人所有かそれに近い形になっていて、僧侶や神官が家業として宗教的な行事を主導しているからだろう。他国から見れば、企業ばかりでなく、宗教の世界にまで、世襲制がのこっていることに驚かざるを得ないだろう。そして、わが国には世襲制度の大型見本として古式ゆかしき天皇制があるのである。
世襲制度というのは、身分や職業が固定していた封建社会以来のものだから、日本人の意識の中には未だに封建時代の遺制が残っているといってもいいのではないか。日本人は、今もなおドライになりきれず、そこに他国にはないよき慣習が残っている半面、近代国家にはあるまじき未熟な政治意識を残すことになった。これが世界に冠たる自民党による一党支配を成立させる背景になっている。
不二家に見るように、世襲制は政治の世界でもいずれは行き詰まる。しかし、これを放置しておくことは、小泉・安倍の落第点政治を当分の間続行させることになる。これで本当にいいのだろうか。