<首相がバカだと、国民は辛い>
登場人物 熊さん
隠居
熊さん──今日の新聞を読んだかい? 元の和歌山県知事だった北川正恭というおっさんが、若い後輩に、「町長が馬鹿だと、町民は不幸だ」とさとしていたよ。おいらは、これを目にした瞬間に、「首相がバカだと、国民は辛い」という言葉を思い浮かべたね。麻生首相の顔が浮かんできたんだ。
隠居──手厳しいね。
熊さん──だって、そうじゃないか。彼は首相になったら直ぐに国会を解散すると文藝春秋に書いておきながら、平気で、その約束を破っている。それだけじゃないよ、しょっちゅう言うことをコロコロ変えておきながら、その点を記者に指摘されると、判で押したように、「いや、私は一貫して同じことをいっている」と言い張る。金持ちのお坊ちゃんだよ。
隠居──金持ちのお坊ちゃんと、言うことがコロコロ変わるってのと関係があるのかい?
熊さん──ああ、関係があるんだ。金持ちのお坊ちゃんは、イタズラをして証拠を目の前に突きつけられても、「ボクがやったんじゃないよ」と言い張るんだ。まわりの大人たちは、相手が金持ちのお坊ちゃんだから、仕方なしに許してしまう。そういうことを重ねてきたから、彼はヘマをしたあとでも自分は正しいと頑張るんだ。そして、それが通ると思っている。
隠居──成る程ね。しかし、バカはバカなりに取り柄があるんだよ。
熊さん──へえ、あの麻生太郎にも取り柄があるってのかい? 是非、聞かして貰いたいね。
隠居──バカだから、あんまり悪いことが出来ないのさ。財政が逼迫しているときに定額給付金で2兆円も無駄遣いされるのは迷惑だが、これも元はといえば公明党に押しつけられたものなんだ。自民党の幹部議員がいみじくも言っていたな、定額交付金は、公明党を引きつけておくための必要経費だとね。あれは、「連立コスト」なんだそうだよ。
熊さん──定額給付金ってのは、来るべき選挙をにらんで政府与党が国民を買収しようとしたものなんだろう?
隠居──それもあるがね、首相は公明党の要求を容れるかどうか、実は迷っていたと思うんだ。だが、結局、要求を呑んだ。それも彼が、臆病だからだな。彼は、麻生太郎じゃなくて、臆病太郎だといわれているよ。彼が臆病なのも熊さんの言い方を借りれば、どうしようもないバカだからさ。先を見通すことができないんだ。しかし彼には悪気はないんだよ。
熊さん──ご隠居が麻生太郎を弁護するとは思わなかったな。安倍晋三に対しては、厳しい見方をしていたぜ。
隠居──安倍晋三も首相の器ではなかった。あれに首相の座を与えたのは、キチガイに刃物を持たせたようなものだったね。彼は大変な犠牲を払って日本が手に入れた戦後民主主義をチャラにして、戦前の日本に戻そうとしていた。だが、いい気になって暴走したあげく、自爆してくれたから助かったがね。安倍に比べたら、麻生太郎には暴走するだけの知恵も度胸もないんで、そこが救いになっているんだ。
熊さん──すると、安倍晋三の場合は、「首相がバカだと、国民は救われない」くらいに言っておかないとまずいかもね。いや、「首相がバカだと、国民は地獄に落ちる」と言ったほうがいいか。
隠居──国民を地獄に落としたのは、小泉純一郎だよ。彼のお陰で、日本は悲惨な格差社会になってしまったんだ。
熊さん──でも、それは竹中平蔵の責任じゃないの? 小泉首相は竹中のいいなりになっていたんだろう?
隠居──小泉という男は偏執的なところがあってね、首相在任中はブッシュにべったりくっついて、アメリカとの関係さえ上手くやって行けば、アジア諸国は自然に日本に付いてくる主張していた。経済政策も同じさ、竹中の献策があったとはいえ、金持ち優遇一本槍で突き進んだからなあ。あの労働者派遣法と来たら・・・・
熊さん──でも、竹中は、「近頃の若者は終身雇用のような勤務形態を嫌って、もっと多様な働き方を求めている」と言っていたぜ。労働者派遣法を作ったのは、フリーターを希望する若者が増えてきたからだというんだ。
隠居──それが竹中お得意の論法なんだな。終身雇用よりフリーターを希望する若者もいるかも知れない。だが、それはごく一部なんだ。部分的な現象を拡大して、それがすべてだと言いくるめるのが、奴の癖なんだ。そうかと思うと、彼は法人税を安くしないと、企業は競って生産拠点を海外に移すと脅したりする。法人税の安い外国、安価な労働力が手に入る開発途上国に工場を移す企業があることは事実だが、これも所詮は部分的な現象でね、それで国内の産業が空洞化するなどということはあり得ないんだ。
熊さん──おいらも、小泉・竹中が日本をダメにした元凶だったことは認めるよ。でも、小泉人気は依然として続いているじゃないか。
隠居──小泉政治のお陰で奈落の底に突き落とされたフリーターやニートが、小泉人気を支えているのは皮肉だがね、これは恋人の暴力に苦しんでいる娘が、鼻血を出しながら、「あの人の男らしいところが好き」といっているようなものさ。だが、お人好しの国民もいつまでも騙されてはいないよ。