甘口辛口

亀田家の長男(隠居の放談)

2007/10/28(日) 午前 11:58
亀田家の長男

熊さん─今日は、ご隠居に教えてやろうと思ってきたよ。何時も、隠居のご高説ばかりを拝聴しているからね。

隠居─それは有り難いな。で、何を教えてくれるんだね?

熊さん─亀田興毅の記者会見についてだよ。興毅は今度の謝罪会見で男を上げて、世間じゃ、亀田史郎のようなバカ親父のところにああいう息子が生まれるのは珍しいと見直しているだろ。ところが、バカ親父のところに、出来のいい息子が生まれて来るというのは、決して珍しいことじゃないということを、ご隠居に教えに来たんだ。

隠居─ほう。

熊さん─まあ、長屋に来てみなよ。驚くと思うぜ。わがままな親父、馬鹿な親のところに限って、出来のいい息子がいるからね。

隠居─ふーん。野口英世の場合と同じなんだな。野口英世の父親は、どうしようもないダメ親父だったんだ。それで野口の母親は苦労をした。その苦労をみて、野口は母を楽にしてやろうと頑張ったといわれている。

熊さん─違う、違う。そうじゃないんだ。わがままな親父というのは、子供を可愛がる時にもわがままで、気分次第なんだよ。そんな親だから、平気で子供の喧嘩に顔を突っ込んだり、理屈抜きで子供の味方をする。亀田史郎も子供のことで学校に抗議に出かけたり、子供が喧嘩した相手の家に怒鳴り込んだりしたそうじゃないか。

隠居─しかし、子供にとっちゃ、そんな親はありがた迷惑だろう?

熊さん─違うね。そういう親は、普段は子供をガミガミ叱りとばす。これも親の気分次第で、理不尽な叱り方をするんだよ。子供は、当然、親に不満を持つが、その一方で、世間を敵に回してでも自分を守ってくれる親には感謝する。

隠居─つまり、こういうことかい。親がいざとなれば理屈抜きで自分の味方をしてくれるから、フィフティーフィフティーで、自分も親のわがままを許す・・・・・

熊さん─そういってしまっては、身も蓋もないが、まあ、そんなとこかな。とにかく、わがまま勝手な親父と息子の間には、一種独特の親子の情愛が育つんだ。そして、そういう親子を観察していると、親父の方が子供っぽくて、息子がおとなびている。不思議なくらいだよ。

隠居─それは、親父が反面教師になっているからだろうな。親父が周囲とトラブルばかり起こしているから、子供は周りとうまくやっていこうとする。だがね、亀田興毅は親父の影響を濃厚に受けているんじゃないのかね。亀田興毅の言動を見ていると、彼は親父の真似をしているように見えて仕方がないのだかね。

熊さん─その点も、ちょっと違うなあ。親父の方は、記者会見なんかで恫喝したり、相手を睨み付けたりするだけで、芸がないんだ。ところが、亀田興毅は巧みな話芸でその場を明るくする。これまでの記者会見を見ていると、意識してのことかどうか知らないが、興毅は野放図に振る舞ってみせることで、親父の与えるマイナスの印象をカバーしているよ。

隠居─大分、亀田興毅のことが気に入っているようだね。

熊さん─ご隠居はどうなんだい? 興毅の謝罪記者会見を見ていて、やっぱり彼を見直したんじゃないか。

隠居─それは認めるよ。あの会見で、彼は記者たちにかなり手ひどい質問をされていたが、興毅はじっと我慢をしていたからね。テレビカメラが彼の顔を正面から映していたから、彼の気持ちが手に取るように分かったよ。

熊さん─そう、カメラは彼の表情をすっかりとらえていたな。

隠居─彼は、ちゃんと自分の気持ちを切り替えることが出来る男だね。今度の謝罪会見で、彼はこれまでの記者会見とは違ったところを見せていた。

熊さん─これまでの記者会見は、一家で相談してやり方を決めていたそうだぜ。

隠居─亀田興毅が打ち合わせ通りに行動していたとしたら、それも彼に感情を切り替える能力があったからさ。感情を切り替える能力があるというのは、大事なことでね。スポーツマンには、特に必要なんだ。亀田興毅の世界タイトル戦は、最初のものはぶざまだった。頭を先にして突っ込んでいく闘牛スタイルでね、まるで素人の戦法だったよ。だが、次の試合では、やり方を切り替えて、足を生かしたアウトボクシングをやっている。こういう切り替えの早さも、亀田興毅に見かけによらない人間的柔軟さがあるためだよ。これに比べたら、親父の史郎や、それから大相撲の朝青龍なんかは、哀れなものさ。一度、感情をこじらせたら、そのまま進んで益々意固地になっていく。

熊さん─感情を切り替えることの出来ないヤツが、ヒール(悪役)になるのかなあ。

隠居─そうかもしれない。熊さんは、児童売春で逮捕された札幌の小学校教頭の話を知っているかね。

熊さん─ああ、ワイセツ写真を雑誌に投稿して千八百万円稼いでいたという男だろう。

隠居─新聞記事によると、この教頭先生は、「僕たちって、どうしてこんなに仲がいいんだろうね」といって奥さんをだましていたそうなんだ。そして、この先生と話をした雑誌編集者や記者たちは、例外なしに皆彼が好きになったそうだ。事件の発覚後、奥さんが旦那への怒りの手記を週刊誌に発表していたんで、読んでみたよ。そしたら、奥さんは、旦那が逮捕されるまでは、この男のことを「言い尽くせないほどいい人だ」と思っていたという。

熊さん─するてーと、本当の悪党ほど態度の切り替えがうまくて善人面をしているというわけか。ヒール役を演じているヤツは、まだ、ましなんだな。

隠居─そうさ。政治の世界でも、本当に悪いヤツは小泉純一郎なんだよ。諸悪の根元は、小泉改革にあるのだが、小泉本人は辞めてからも依然として高い人気を保っているからね。