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美輪明宏の死後世界

2013/12/23(月) 午前 10:11
美輪明宏の死後世界

ここに不妊治療を受けて、ようやく女の子二人の双子を得た女性がいる。だが、そのうちの一人が2歳のとき病死して、残された子供は一人だけになった。まだ一人いるではないか,そんなに悲しむなと言うのは、第三者の意見であって、母親からすれば残された一人を見るたびに急死したもう一人が思い出されて悲しさが消えることはないのである。

残された女児は今年から保育園に通うようになった。それにつけてもあの子が生きていたら二人揃って園に通えるのにと悲しみがいや増してくる。これを見ていたその母親の母、つまり亡くなった女児の祖母は、三輪明宏に助言を求めることにした、「私と娘に、これから先の人生を穏やかに過ごす方法を教えてくださいませ」と。

この訴えを受けて、美輪明宏は奇想天外の回答を提示するのである(朝日新聞土曜版)。彼はまず、こう断言するのだ。

「一部の科学者やインテリと称する科学迷信の人たちが否定する死者の世界、俗に言う『あの世』というのは存在するのです」

それから美輪は、確信ありげに彼(彼女?)が考える死後世界について語り始める。それによると、どうやらこの世は死後の世界に進むための予備校のようなところらしいのだ。彼は断言する、幼くして死んだ子供は、飛び級であの世に帰ることができた優等生なのだ、と。(そうだとすれば、100歳まで生きた長寿老人たちは、落第を繰り返して、いつまでたっても卒業できなかった劣等生なのか)。

美輪は、さらに保証する、無垢のまま死んだ優等生は、あの世にいっても特別扱いされ、「なかなか行けない高い次元の世界、『極楽』とか『天国』と呼ぶ純粋エネルギーの世界にストレートに行ける場合が多い」、だから、わが子が早逝したとしても、それは実はおめでたいことなのである、と。

美輪はこういって相談者を慰めておいて、死後世界を否定する科学者やインテリたちを攻撃する。死後の再生を否定することこそ迷信にとらわれているという理由で、彼はこれを「科学迷信」と呼ぶのである。

確かに、美輪説にも首肯できるところはある。幼子が死ねば親兄弟は嘆くけれども、死んだ時点で快と苦の総量を比較すれば、子供のうちに死んだ方がいいかもしれないのだ。小学校2〜3年までは、遊びに明け暮れて、毎日が楽しかった。けれども、その時期を過ぎると、彼らの前には艱難辛苦が待ちかまえていて、学校のテストだ、いじめだと「四苦八苦」の端緒がはじまり・・・・。

それにしても、美輪はどうして死後の世界にまで「階級制度」を持ち込むのだろうか。「あの世」にもエリートと非エリートの差があって、エリートは「なかなか行けない高い次元の世界」に住むが、非エリートはそこへは行けないらしいのである。

それにエリートが行ける高い次元の世界は、「純粋エネルギーの世界」だというけれど、エネルギーには純粋なものと、そうでないものがあるのだろうか。もし「あの世」にエネルギーがあるとしたら、そこは現世と同じで「生の世界」と変わらないことになりはしないか。

愚老は美輪に忠告したい、死後の世界について語るものは、すべてペテン師であると。来世について釈迦は、「不識」といい、孔子は「生についてさえ知らないのに、どうして死後のことが分かるか」といっている。イエスも死後の世界について一言も語らなかった。