甘口辛口

最悪の選択、安倍晋三

2006/9/20(水) 午後 4:42
自民党の総裁選挙が終わり、予想通り、安倍政権が成立することになった。
小泉首相の敷いてきた右傾化路線が行くところまで行きついて、岸信介亜流のタカ派政権を生むという最悪の結果をもたらしたのである。立花隆は、「安倍晋三に告ぐ」という小論を書いて、安倍政権への「宣戦布告」をしているけれども(月刊「現代」10月号)、ハト派の全員が宣戦を布告するくらいの覚悟をもって安倍政権に対抗しないと、戦後営々と築いてきた民主主義は画餅に帰するのだ。

私のような田舎住まいの老人でも、安倍政権の出現には強い危機感を持っている。だが、私などには、効果的な対抗手段がない。精々「意地悪爺さん」の裏技を使って、ブログやHPで安倍政権にイチャモンをつけるしか手がないのである。

安倍晋三は、上品で親しみやすいからという理由で人気を得ている。だが、彼を取り上げたいくつかのテレビ番組を見ていて気になったのは、安倍晋三という政治家が自分の気に入らない発言をする相手をやたらに訴えていることだった。そうした訴訟で勝訴しただけでは気が済まず、もっと罪を重くせよと上告までしているという。裁判に持ち込まないまでも、内容証明つきの手紙を送りつけて相手を脅迫するようなこともしているらしい。

ある番組を見ていたら、四人出席していたジャーナリストのうちの二人までが、内容証明付きの抗議の手紙を安倍晋三から受け取っていた。その手紙は弁護士と連名の形になっていて、当方は訴訟を考慮中というような内容だったという。

小泉首相は何事も右から左へ聞き流してしまうお手軽な性格だったから、人が何を言っても平気でいた。だが、安倍晋三は見かけとは逆に、小さなことも根に持つ復讐欲の強い人物らしいのだ。だから、けなされれば根に持つと同時に、褒められれば悦に入ってニタニタするのである。

安倍晋三に取り入ろうとする者たちは、こういう彼の性格を見抜いて、競って彼を褒めちぎり、その声の大きさで彼の寵愛をかちえようとしている。その筆頭が山本一太という参議院議員で、安倍商会の多弁なセールスマンという役柄を自分から引き受け、テレビカメラの前で、声を張り上げ安倍晋三を賛美する替え歌まで歌っている。そこまで身を落とす議員はほかにいないだろうと思っていたら、別の議員がやはりテレビカメラの前で安倍賛歌の替え歌を歌ったのには驚いた。取り巻きにこんな議員が多いというのも、そもそもボスの資質に問題があるからなのだ。

とにかく自民党議員の浅ましさは、目を覆いたくなるほどだ。中国の宮廷には、男根を切り落として皇帝に近侍する宦官というのがいたけれども、雪崩を打って安倍晋三支持に回った議員達は、その節操のなさにおいて宦官にそっくりなのである。

個人的な印象で物を言って申し訳ないけれども、私は昔から高市早苗という女性議員を好かなかった。厚化粧した彼女には、清楚とは反対のヌラッとした感じがあり、これが能弁に自説を語るのを聞いていると何となく寒気がしてくるのだ。高市議員も安倍応援団としてテレビに出ているのに加え、さらに小池百合子が宗旨替えをして安倍に媚びを売りはじめたと聞いたりすると、筋の通らない話ではあるが、ますます安倍晋三を敬遠したくなるのだ。

安倍晋三の政策ブレーンが、京都大学の中西輝政だというのにも反発を感じる。中西輝政について、以前に書いた記事があるのでそれを引用して、安倍総裁への祝辞に代えたい。

<週刊文春には、「保守派の論客」中西輝政による、まるで戦前に戻ったようなコメントが掲載されている。「保守派の論客」と名の付く面々はよほど朝日新聞が嫌いらしく、このコメントにも「皇室の将来に刃を向けた朝日新聞」というおどろおどろしい題がついている。

朝日新聞は「開かれた皇室」を唱導して、古いしきたりを改廃せよと煽っている。だが、そんなことをすれば、皇室の影が薄くなるではないかと中西は言うのだ。朝日の記事は「皇室を卑近なものに貶めることで、皇室という存在を限りなく希薄なものにする底意」を秘めているというのである。

彼は皇室を身近なものにすることに反対する。例えば、イギリスの王室は私事を公開したために国民の笑いものになった。日本も「菊のカーテン」を引き上げれば、「皇室への忠節心」を失わせることになる。そこで、中西はこう提言するのだ。

「これまでカーテンを上げる方向でやってきた日本の皇室も、ディグニティー(尊厳)を重視する観点から、そろそろカーテンを下げる時期に来ているのではないかと感じています」と。

成る程、戦前なら天皇を秘密のベールに包むことで神格化出来た。終戦の詔勅をラジオで聞くまで、国民は天皇の肉声を耳にしたことが一度もなかったのだ。

だが、情報化社会の現代に同じことをやったら、マスコミにあることないことを探り出されて、ディグニティーが確保されるどころかカリカチュアの種にされるだけである。隠すより、顕わるるはなし。残念ながら、九重の奥に鎮座し秘密のベールに包まれた皇室にディグニティーを感じるような単細胞日本人は、中西教授以外に見あたらない。どうも彼は現代日本人を過小評価し、ご自分と同等の知能しか持っていないと錯覚しているらしい>

妄言多謝。