正体見たり
熊─ご隠居に聞きてえことがあるんだがね、教えてくれるかい?
隠居─何を聞きたいんだね
熊─安倍首相のことで、またカカアと喧嘩になったんだ。カカアは首相をナルシシズムだといって弁護するんだがね、ナルシシズムって、何のことだね? どうやら、小泉前首相の真似をするという意味らしいんだがねえ
隠居─何で小泉の名前が出てくるんだい?
熊─だって、奴の頭はライオンみてえだというじゃないか。シシ(獅子)にナル、つまりライオンになりたがるから、ナルシシズムというんだろ?
隠居─それはなかなか面白い解釈だが、ナルシシズムってのは、平たく言えば自分で自分に惚れ込むことなんだ。
熊─成る程、そういうことか。
隠居─安倍晋三が首相になるのは自分しかいないと思いこんだり、参院選挙であれだけ負けながら国民は自分の政策に期待していると言ったりするところは、確かにナルシシズムを思わせるね。だが、私の見方はちょっと違う。彼は臆病な権力主義者なんだと思うね。
熊─権力主義者?
隠居─うん、その前兆は首相になる前からあったよ。彼は自分の気に入らない記事を書く記者やライターを脅迫することで有名な男だったんだ。自分に不利になるような記事を見つけると、直ぐにその記事を書いたライターに書状を送りつけるんだな。名誉毀損で告訴するぞという脅しの書状だよ。今、彼がマスコミに叩かれているのも、昔、こういう権力的なやり方で記者やライターに圧力をかけて彼らの恨みを買っていた為さ。
熊─国会で強引な単独採決を繰り返したのも、そのせいだな
隠居─人間がなぜ権力主義者になるかといえば、対等の立場で相手と議論する自信がないからだ。それで、権力や暴力に頼ることになる
熊─おい、おい、よしてくれよ。カカアに対するオレの態度を皮肉ってるようじゃないか。カカアは口も達者だが、あれで手も早いんだぜ。
隠居─臆病だから、権力主義者になるというケースもあるな。安倍首相は、こっちの方でね、臆病だから、まわりをお友達で固めたり、風声鶴唳に怯えたりする。
熊─なんだい、そのフウセイカクレイってのは?
隠居─風の音や鳥の鳴き声にも怯えるということだよ。彼は、ちょっと情勢が不利になると、あわてて過剰反応するだろう。そして、その場凌ぎの政策を連発する。器が小さいというか、底が浅いというか、考えて見れば、哀れな男だよ。
熊─でも、猪瀬直樹は安倍首相を弁護していたぜ
隠居─それは、初耳だな
熊─昨夜、「たけしのTVタックル」という番組を見ていたら年金問題を取り上げていてね、猪瀬直樹が「安倍首相に責任は全くない、悪いのは社保庁の役人どもだ」と強調していたよ
隠居─猪瀬という男は、昔から番犬タイプの男だったんだ。硬骨を気取っているいるけれど、権力に目をかけて貰うとホクホクしてね、直ぐさま、ご主人さまの番犬になる。小泉前首相に拾われて道路公団の審議会委員になってからは、彼は忠実な番犬ぶりを発揮して小泉を批判する者に噛みついていたよ。石原慎太郎は、そういう番犬的性格を見込んで彼を東京都の副知事に任命したんだ。熊さんの話を聞くと、今や、猪瀬直樹は自民党政権の番犬になりさがったらしいな
熊─そう言やあ、あの面構えで鼻の詰まったような声を出すところは、ウウっと唸る番犬そっくりだね
隠居─文筆で生活している者には、ああいったタイプの人間が多いんだよ。「ヤンキー先生」こと義家好介もこのタイプだね。
熊─彼も確かに本を書いていた
隠居─その本の中で、義家は高校時代にバイクで瀕死の重傷を負ったとき、安達俊子という先生が枕元に駆けつけて、「あなたは私の夢なのよ」と言ってくれたと書いている。彼は、その一言で立ち直って更生の道を歩み始めたというんだな。だが、その安達俊子先生は義家のことを、「彼の人生選択は、変節につぐ変節です」と語っているそうだよ。
熊─へえ、あのヤンキー先生がねえ
隠居─彼は高校教師になってからは、文部省のやりかたに反対して政府批判を繰り返していたが、政府から声がかかると喜んで教育再生会議の委員になった。そのことを同僚委員などから指摘されると、あれは教員組合に言わされたんだと弁解する。週刊誌に「言ってることはウソばかり」という見出しで義家のことが載っていたので読んでみたら、彼は実際ウソの多い男らしいな。そこが、ヤンキーのヤンキーたる所以かもしれないがね
熊─ご隠居の口にかかっちゃ、誰も彼もみんな落第だな。
隠居─先日、あんたのおかみさんと平準化作用の話をしたが、冷静に眺めたら人間の正体なんて皆似たようなものさ。しかし、その似たり寄ったりの弱点を備えた人間が、権力を握ると、周囲に与える被害が大きくなる。だから、権力者や権力にすり寄る卑しい人間に対しては、特に厳しい目を向けている必要があるんだ。