(「週刊現代」の記事)
<政治家の妻>
週刊誌が鳩山由紀夫夫人を特集で取り上げていると聞いたので、野次馬精神旺盛な私はその記事を読むためだけに「週刊現代」を買ってきた。実は、前々から「鳩山由紀夫は略奪婚によって夫人と結婚した」という記事を何かで見たため、その真相を知りたいと思っていたのである。
「政治家の妻」の問題を意識するようになったのは、台湾の前総統陳水扁夫人が不正な資金集めで夫を失脚させたのに続き、盧武鉉前大統領が夫人の収賄行為の責任を取って自殺したからだった。盧武鉉夫人は盧武鉉の二番目の妻だった。病死した最初の妻は若いときから夫と苦労を共にして来たから夫の信条を理解していたが、二番目の妻はまだ、夫の人間性や信念を理解するところまで行っていなかったのである。
政治家の妻には、夫の人間的なレベルまでついて行けず、そのため夫の立場を危うくしてしまうようなケースが少なくない。では、金丸信夫人の場合はどうだろうか。田中角栄の一の子分だった金丸は、親分の没落を目のあたりに見て、資金集めの工作をほどほどにとどめていた。だが、妻は夫のやり方を見習って、盛大な資金工作を展開し、100億円といわれるような私財を積み上げている。だから、陳水扁や盧武鉉の場合が夫妻断絶型とすれば、金丸信の場合は夫妻連携型ということになる。
鳩山由紀夫夫人の問題に話を戻すと、彼女の経歴は次のようになっている(「週刊現代」の記事による)。
<幸夫人は中国・上海に生
まれ、神戸の名門女子中を
卒業後、宝塚歌劇団に入団。
娘役「若みゆき」として活
躍し、6年間在籍したのち
退団した。日本人実業家と
結婚しサンフランシスコで
生活していたが、そこでス
タンフォード大学に留学中
だった鳩山由紀夫氏と運命
的な出会いを果たす。>
鳩山が夫人を略奪したいきさつについては、既にいろいろなメディアが取り上げているそうであるが、この件について夫人自身がどう語っているかといえば、
「(米国で)前夫と離れ、
宝石商をするために一人暮
らしを始めたんです。そこ
に、鳩山がすみつくように
なり、同棲のような形にな
ったので、結婚することに
した」
鳩山が夫人と親しくなったのは、彼の両親が夫人に「面倒を見てやってくれ」と頼んだからだという。それが出発点になって、どうやら、鳩山由紀夫が最初に夫人に夢中になったらしい。そうしたこともあって、結婚後は夫人が鳩山の鼻面をとって引き回しすようになったらしいのである。
鳩山由紀夫のスローガンは、「愛のある政治」「友愛政治」であり、これらの用語には何となく宝塚歌劇調といった感じがある。男性の目から見れば、女房に惚れ込んだお坊ちゃんが、女房の献策を受けて、こうした言葉を並べているように見える。
従って、「週刊現代」の記事も、由紀夫が夫人に支配されていると解する「週刊文春」への反論という形を取っている。「週刊文春」は、「鳩山夫人は正気か?」という特集を組み、最近放送されたテレビ東京系『美女放談』での夫人の発言を取り上げて、彼女の正気を疑っているのだ。
夫人の発言とは、次のようなものである。
「ハリウッドで映画を作り
たいと7〜8年思い続けて
ます。なにしろ主役はトム・
クルーズですから。なぜ彼
かというと、私は前世で彼
が日本人だってことを知っ
てるんですよ。だから彼に
『久しぶりね』って言えば、
彼、わかると思うんですよ」
この発言について夫人は、こう釈明している。
「なぜトム・クルーズか?
それは、うーんと……ファン
なんですよ! 大ファン。
私が! 楽しいじゃないで
すか、そう(前世で一緒と)
言っておいたほうが。そう
いうことですね」
「週刊文春」はまた、夫人の金星発言も取り上げている。これは、夫の鳩山由紀夫が妻の言葉として紹介したものなのだ。ある日、鳩山は妻から、「私、昨日金星に行ってきたの」といわれて驚いたことを、「ムー」という雑誌に書いているのである。―――このことに関する夫人の釈明。
「金星でとくになにをして
きたとか、誰と会ったとい
うことはないんです。ただ
バッと行って。行ったんじ
ゃないかなあ、という夢で
すね。だから、(朝起きて
夫に)そう言おうと思って。
なんでも、言った者勝ちで
しょう。楽しいじゃないで
すか。そう考えたほうが」
週刊誌によれば、鳩山由紀夫はこういう夫人に洗脳されて霊能者に頼るようになり、夫人と一緒に護摩行に参加しているという。
鳩山の行動は、やはりお坊ちゃん育ちだった安倍晋三が、夫人と手を握りあって飛行機から降りてきたり、「美しい国」を内閣のスローガンにした事例を思い起こさせる。安倍のこうした歯の浮くような振る舞いも、何やら夫人にリードされてのことではないかと疑われるのである。
安倍晋三夫人は韓国ドラマが大好きで、韓国の統一教会を後援しているといわれている。その影響を受けて安倍晋三も、統一教会との関係を云々されているし、そもそも彼が怪しげな霊能者に帰依しているという話は、昔から広く語り伝えられているところなのだ。
こう見てくると、お坊ちゃん政治家に対する夫人の影響は、甚だ大きいと言わざるを得ない。そして、その旦那を思うように操縦している夫人たちは、揃って新興宗教や霊能者に目がないらしいのである。
週刊誌が伝える鳩山夫人の発言で気になるのは、彼女が次のような言葉を繰り返していることである。
「楽しいじゃないですか、そう言っておいたほうが」
「楽しいじゃないですか、そう考えたほうが」
彼女は事実の世界と主観的世界を切り離し、事実と多少食い違っていても主観世界を楽しく保つ方が大事だと考えているらしい。
鳩山夫人の友人は、彼女のことを、「幸さんは好奇心のかたまりのような人」とか、「無邪気な感性の所有者」といっている。それはそれで結構だが、政治は事実の世界でなされる作業である。旦那を操縦する際、対象をリアルな目で見ることも忘れないようにしてほしい。
(追記)はじめは、酩酊会見の中川昭一代議士の話から始めるつもりでしたが、上掲のブログを書く段になって、そのことをすっかり失念してしまいました。
中川昭一もお坊ちゃん政治家で、夫人に支えられて活躍していたようです。酩酊会見の件で追求されて帰宅した夫を、夫人が大声で、「がんばれ、がんばれ、日本一」と励ましていたことは、今も記憶に生々しく残っています。
お坊ちゃん政治家とその妻の関係には、尽きせぬ興味があります。