(生け垣に囲まれた家)
<保守右派の精神構造>
先日、「たかじん委員会」という番組を覗いたら、大変おもしろかった。保守右派の歪んだ精神構造を知るのに、手頃な番組だったからだ。その後、この番組が、「日本を悪くした政治家ベストテン」という特集をやっていたので、チャンネルを合わせてみたら、ちょっと信じられないようなアンケート結果を公表していた。
番組は例によって、保守的な評論家や政治家に調査票を送って、その結果を集計したらしいから、結果に偏りが出るのもやむを得ないかもしれない。アンケート結果を5位まで示すと、こうなっているのである。
1・村山富市
2・河野洋平
3・田中角栄
4・森喜朗
5・土井たか子
村山富市・河野洋平・土井たか子の三名は、日本の侵略行為を認めて中国や韓国に謝罪している。それまで近隣諸国は日本に対して不信の目を向けていたが、村山首相の謝罪声明を受けて反日感情をやわらげ、日本を隣人として受け入れるようになってきたのである。だから、村山富市は、日本がアジア外交を本格的に展開するための基盤を築いた政治家なのだ。その功績を歴代の自民党内閣も無視することは出来なかったから、新しい自民党内閣が出来るたびに、首相の多くは村山談話を踏襲すると宣言してきたのである。
にもかかわらず、保守右派は日中戦争をわが国の自衛戦争だと言い張り、日本の侵略行動を認めようとしない。他人の家に土足で上がり込んでおいて、「これは家宅侵入ではない」と頑張るものがいたら、頭がとち狂っているというしかないだろう。保守右派が何故こんな馬鹿なことを言い張るかといえば、自国のすることはすべて正しいとする身びいきの心理にとらわれているからだ。
保守右派や宗教右派の精神構造は、どこの国でも同じである。彼らは、自国のすること、自派宗教のすることはすべて正しく、これに反対するものはすべて悪だとして敵視する。そんな幼児的な精神構造からすると、敵に向かって謝罪することなどは許し難い裏切り行為に映る。河野洋平が村山富市に次いで二位になったのは、彼が同じ保守派の一員でありながら、中国に対して謝罪し、日中の友好関係を強化する努力をしているからだ。
自民党の政治家から田中角栄と森喜朗の二人が選ばれたのは、穏当といってもいいかもしれない。だが、アンケート結果についてコメントを加えていた出席者のなかから、森喜朗を弁護するコメンテーターが現れたのには呆れた。森喜朗は政治的な見識は皆無に近く、裏に回って談合政治をすることだけで長老になり上がった前近代的な政治家である。この森喜朗を弁護したコメンテーターは、例によって三宅久之と金美齢だった。
前回、「たかじん委員会」を見ていたときにもこの二人の暴論に呆れたものだが、考えてみれば、この二人は森喜朗と共通点があるかもしれない。森は政策も哲学も持たず、相手の顔色を見てその場その場をとり繕い、何となく一座をリードするというタイプの男で、この思想も哲学も持たないという点が、三宅と金に共通しているのである。
次に見た「たかじん委員会」は、日本に攻撃を仕掛けてくると思われる仮想敵国に関する特集を組んでいた。そのベストテンの上位5国は次のとおり。
1・中国
2・北朝鮮
3・アメリカ
4・ロシア
5・韓国
安倍晋三や先日急死した中川昭一は、口を開けば日本が北朝鮮や中国から攻撃されると警告して来た。だが、これは日本が海に囲まれた島国だという条件を無視した議論なのだ。海というのは決定的な防護壁になるのである。イギリスは日本と同じ島国だが、ヨーロッパを席捲した ナポレオンも、ヒトラーも遂にイギリスを占領できなかった。ヒトラーは大規模な空襲を行い、最後にロンドンめがけてロケットによる集中攻撃を加えたけれども、空からの攻撃には限界があって、イギリスに致命傷を与えることは出来なかった。
もし、北朝鮮や中国が日本にロケット攻撃を仕掛けたとしても、ロケット防御システムが進歩している現在では、やはりその効果には限界がある。もし、彼らがロケットに戦術核を凌駕するような本格的な核爆弾を搭載して日本を攻撃でもしたら、逆にアメリカその他の国による原爆の集中攻撃を招いて自滅してしまう。現代の世界は、最早主要国による本格的な戦争が不可能な時代に入っているのだ。
考えて見て欲しのだ、以前は国境線を隔てて対峙している陸続きの国家は、常に相手国からの攻撃を予想して脅え続けていた。フランスとドイツはナポレオン時代に戦い、普仏戦争で戦い、第一次世界大戦と第二次世界大戦でも戦った。繰り返し戦火を交えてきた両国が、今では最も信頼できる二国関係を構築しているのだ。国境を接して並び立つ強国は、以前には敵対感情を持ち合っていたけれども、今では友好感情を背景にむしろ一体化しつつある。
日本と中国や韓国との関係も同じだ。これらの国々は、経済面で密接に結ばれ、相互依存の関係にあるため、戦争をしようとしても出来ない関係になっている。北朝鮮の存在が不気味だとタカ派はいう。だが、北朝鮮には日本と戦わなければならない理由はない。理由もなしに攻撃を仕掛けたら、北朝鮮は彼らの期待している日本からの賠償金を永久にあきらめなければならなくなる。
世界各国は、協調しなければ生きていけない時代を迎えている。それ故に、あらゆるところで平和が希求されているこの時代に、仮想敵国のランキングをでっち上げ、学校で愛国心を教育せよなどといっている保守右派の時代錯誤には驚くほかはない。
一度、「たかじん委員会」のバカバカしさを見物してみることをお勧めする。