被害妄想の三バカ老人
新聞を見ていたら、「週刊文春」の広告が載っていた。それによると、今週号には、桜井よしこが大橋巨泉に抗議した記事が載っているらしい。推察するに、大橋巨泉が桜井を「被害妄想の極致」と評したので、桜井よしこが怒り狂って反撃を試みたようなのだ。
私は問題の週刊文春を読んでいないから、桜井が何について被害妄想を起こしたのか想像するしかない。だが、彼女は年中、被害妄想に駆られて途方もないことを口走っている老女である。その妄想バアさんによる、最近の妄想ということになれば、何に関するものか誰でも見当がつくのではないだろうか。おそらく、「外国人参政権」に関する被害妄想なのである。
永住外国人に地方参政権を与えようというのは、昔から公明党が掲げてきた主張であるし、最近では民主党も公約の一つにしている。だが、わが国で暮らしている永住外国人の数など知れたものだから、彼らに参政権を与えたところで、どうということもないのである。ところが、先日、何気なしに「たけしのTVタックル」という番組にチャンネルを合わせてみたら、この問題で賛成派と反対派が火の出るような勢いで論戦を交わしていたので、たまげてしまった。
普通、激しい議論になれば、一方が喋っているうちに他方も喋りだし、同時に二人の声が重なるという事態になる。だが、この夜の論戦と来たら、テーマごとに両方の陣営が堰を切ったように一時にしゃべり出すので、4〜5人の言葉がぶつかり合って、誰が何を言っているのか全く判別がつかなくなっていた。分かるのは、出席者全員が沸騰しているヤカンのように、異常に興奮していることだった。
相変わらず馬鹿なことを言っているのが、三宅久之という政治評論家で、永住外国人に地方参政権を与えたら、彼らが地方議会を乗っ取り、あげくの果てに日本は外国領になってしまうというようなことを言っている。この人は、沖縄がさほど遠くない将来に県民の総意で中国領になると予言したり、国連なんて屁みたいなものだと国際協調路線を否定したりしている爺さんなのだ。
そして、一週間ほど前には、新聞に外国人参政権に反対する本の広告が載っているのを見た。緊急出版だというので、通例の本の広告に比べて、何倍も広いスペースを使用していた。著者は金美齢と前空幕長田母神俊雄の二人で、広告の文面からすると、本の内容は外国人に参政権を与えたら日本が外人に乗っ取られてしまうと警告するふうのものらしかった。金美齢は、三宅と同様に沖縄県民が中国領になることを望んでいると放言していたタカ派バアさんである。
櫻井よしこ、三宅久之、金美齢の三人は、中国と北朝鮮を蛇蝎のように憎み、テレビや週刊誌上で、この両国が明日にでも日本に攻撃を仕掛けてくるようなことを言いふらしている面々だ。彼らは、揃って重症の被害妄想患者なのである。私も80代半ばのボケ老人だが、この三人の痴呆ぶりを見ていると、自分もああなるのでないかとそぞろ心配になってくるのだ。
もっとも、アメリカ政界の上層部にも、被害妄想に取り憑かれた保守右派がいる。彼らは、日本が核武装することをひどく恐れていて、日本がそんな兆しを少しでも見せると瞬時に強烈な圧力をかけてくる。彼らは、核兵器を持ったら日本がアメリカに攻撃を仕掛けてくると戦々恐々としているのである。
しかし、日本には、アメリカを攻撃しなければならない理由がない。だから、われわれは、米国政界の予想を滑稽な妄想として笑いながら眺めているのだ。
その日本人がアメリカ政界上層部と同じ不安を抱いて、中国、北朝鮮を眺めているのである。中国や北朝鮮には日本を攻撃しなければならない理由がないもかかわらず、軍事的手段だけにとどまらず、外人参政権を利用して日本を占拠しようとしていると心配しているのだ。
こうした根拠のない被害妄想は、自身が他国を支配したいと意識下で願っているがために生まれる。被害妄想は、自身の心にある攻撃欲の裏返しなのである。