内閣官房機密費の怪
内閣官房の機密費については、昔から問題になっていた。社会党が最大野党だった頃、政府は法案を通すために、この機密費を使って社会党を黙らせてきたというような話がまことしやかに流布されて来た。こういう経緯があったから、民主党はこの機密費の廃止を公約の一つに掲げて来たのだ。
ところが、政権を取ったら、民主党はコロッと態度を変えた。この機密費を所管する官房長官になった平野博文のごときは、記者団から官房機密費を本当に廃止するのかと質問されて、
「官房機密費って、何ですか? そんなものがあるんですか?」
と、とぼける始末だった。鳩山首相もこの件については、態度をはっきりさせず、結局、機密費はずるずると、内閣の手に温存されることになったのだった。
こういう状況を黙視できなくなった小淵内閣時代の官房長官・野中広務は、機密費が過去にどのように使われていたかを暴露した。
彼は月額5000万円〜7000万円になる機密費の相当部分を、政治評論家への資金提供に当てていたと明らかにしたのだ。つまり、政府は、評論家を買収していたというのである。野中広務は主だった評論家に金を届けていたが、金の受け取りを断ったのは田原総一朗一人だけだったと語っている。なかには、「自宅を新築したから、3000万円ほどほしい」と要求する評論家もあったという。
こうした評論家が揃っていたから、自民党の長期政権が延々と続いたともいえる。沖縄の悲劇がいつまでも放置されていたことについても、評論家たちは責任を負わなければならないのだ。
――「敗北を抱きしめて」で注目されたジョン・ダワーは、日本本土の犠牲にされてきた沖縄について、こう言っているという。
まず、沖縄は戦争末期、「本土決戦」の時間稼ぎのために戦場にされて多数の死者を出した。
次に、サンフランシスコ講和会議に際しては、日本政府と昭和天皇は本土の占領を早期に切り上げてもらうために沖縄の主権を米軍に引き渡している。
そして、最後に日本政府は米軍基地を沖縄から撤去させず、依然として沖縄に留め置こうとしている。
ジョン・ダワーは、こう指摘した上で、「日本は、真の主権を完全に放棄するという高い心理的代償を払った。というのも、日本は太平洋の向こう側の偉大な白人国家の忠実な信奉者というはまり役を与えられ、永遠の部下になったのだから」としめくくっている。
最近、米軍基地は要らないという世論が動き始めたのに対して、保守系の評論家たちは米軍の基地がなくなったら、日本の安全保障はどうなるのだという聞き飽きた反論を持ち出している。東西冷戦が終わった現在、二国間同盟で安全保障を考える時代は終わったのだ。今は、EUに見るように多国間で和平を構築する時代なのである。
まず、日・中・韓が枢軸を作り、これにフィリピンやインドネシア、更にはインドやオーストラリア・ニュージーランドを加えた多国間で同盟を作れば、安全保障の問題は自ずと解決する。
日本がこういう方向に踏み出せば、自民党に飼い慣らされてきた政治評論家らはこぞって反対するだろう。そしたら、過去の機密費を公開して、評論家の誰がどれだけ政府から金をもらっているか明らかにすればよい。彼らが、いっぺんにおとなしくなることを断言してもいい。