甘口辛口

妻と別居していた「ヒゲの殿下」(2)

2012/6/16(土) 午後 4:49
妻と別居していた「ヒゲの殿下」(2)


「週刊朝日」掲載の「追いつめられた最後の手配犯」を読むと、菊地直子の「男性遍歴」に新しい光が当てられている。これまでの報道では、彼女が一番愛していたのは林泰男だということになっていたが、これは事実ではないらしいのである。

彼女は確かに林泰男を愛していたけれども、それと同じ程度に平田信を愛していたし、中川智正も愛していたのである。そのことは菊地直子が書いていたノートを読めば明らかになるが、「週刊朝日」によると、彼女は逮捕後の取り調べでこう語っているのだ。

「中川智正さんと一緒に逃げたかった」

菊地直子は、アジトに残したノートに、今後いかに行動すべきかについて、いろいろな選択肢を書き出している。
そのなかに「逃げ続ける」という選択肢と「出頭する(自首する)」という選択肢があり、「逃げ続ける」を選べば、当時逃亡中だった平田信に接近することが出来るし、「出頭する」を選べば既に逮捕されている中川智正と連絡を取ることができると記している。

常識的に考えても、彼女が自首したところで中川智正と連絡を取ることなど出来るはずがない。にもかかわらず、彼女は逮捕後の中川の消息を知りたい一心で、自首することまで考えていたのだ。中川はオウム陸上部のコーチ役をしており、菊地直子はその指導を受けながらマラソン大会などに出場していた。二人の間には、コーチと選手という濃密な関係があったのである。

だが、中川智正には別に女性信徒の恋人がいたから、ここでも彼女はその女への嫉妬に苦しむことになった。
林泰男や中川智正、そして大抵のオウム幹部には女性信徒の恋人がいた。反権力・反世俗の集団内部では、男女関係がスピーディーに進行するらしいのだ。

たとえば、学生運動などに打ち込んでいる男女は、最初から同志の異性と反俗という点で繋がっていて、顔を合わせた瞬間から心理的には恋愛一歩手前の状態にある。普通の男女が手間暇かけてたどり着く相互理解という段階に、彼らは最初から到達している。だからこそ、その後の展開が早くなるのである。

私が学生運動に加わっていた頃に見聞したところでは、活動家同士が親しくなる切っ掛けを作るのは女性の側からだった。積極的な女子学生は、目をつけた男子学生に近づいて行って世話女房のようにあれこれ面倒を見はじめる。すると、情にほだされた男子学生は、何となく相手を受け入れる。すると、周囲も二人を恋人同士と認め、ほかの学生は二人に近づくことを遠慮するようになる。

菊地直子は、父親が大学教員という手堅い家庭に育ったから、オウムに加入して何人かの好ましい男性幹部に惹かれながら、積極的な行動に出ることがなかった。彼女は、仲間の女性信徒が自分の愛する男性に接近して恋人になって行くのを黙って見ているしかなかったのだ。彼女のノートには、これら積極型のライバル女性に対する嫉妬と憎しみの感情が溢れている。

そして結局、菊地直子が10年の長きにわたって生活を共にしたのは、オウム内部でリーダーシップの能力がないとされていた高橋克也だった。彼女は、二流の男で満足せざるを得なくなったのである。

こういう過去を持っている菊地直子にとって、一般人高橋寛人との関係は新鮮に感じられたにちがいない。オウムという狭い特殊な世界での変則的な男女関係を体験してきた彼女には、普通の男女が繰り広げる普通の恋愛に深いよろこびを感じたのだった。

──「週刊文春」を買ってきて読んでみると、「ヒゲの殿下」の妻である親王妃は,夫の病室を6月4日に訪ねているが、夫が危篤になってからは一度も姿を見せていない。

臨終の「殿下」を見守ったのは、二人の娘と殿下の母親など女性だけだったらしい。葬儀に際し、長女を喪主とすることは、生前、殿下自身が決めておいたことだったという。娘二人は両親が対立したとき、父親の側についたため、親王妃は家庭内で孤立して三対一の劣勢に立たされていたのだ。

今週の「週刊文春」は、小沢一郎の妻による「離縁状」を誌面に公開している。

離縁状とあるからには、妻から夫に突きつけた絶縁状かと思ったら、さにあらず、妻が小沢一郎の後援者に送った離婚報告の手紙を、そのままの形で公表したものだった。

以前に「幸福の科学」主宰大川隆法の元妻大川きよ子が、夫に叛旗をひるがえして、教団の内幕をマスコミに暴露したことがある。彼女は夫にとって一番痛い個人資産の内容を公表したが、小沢一郎の元妻も問題の書簡のなかで、政治家としての夫の最も痛いところを衝いている。大震災が起きたとき、夫は選挙区の為に努力するどころか、放射能が怖くて秘書と一緒に真っ先に岩手を逃げ出し、その後もずっと被災地に顔を出すことをしなかったというのだ。

小沢一郎は、今やピンチに立っている。

野田首相は、小沢一派を切り捨てることを決断したらしく、自民党と手を結んで消費税法案を通すことにしたし、足下では元妻が選挙民を顧みない小沢の臆病と卑劣を暴露している。大川隆法も小沢一郎も、浮気をして妻の立場を脅かすようなことをしたから妻を怒らせ、窮鼠かえって猫を噛むような行動に追いやったのである。

大川隆法が生きのびたように、小沢一郎も何とか生き延びるだろうが、そのお手並みを興味津々で見守っている。