リベラルが不振だと、未来は暗い
アメリカの東部コネティカット州で、またもや銃の乱射事件がおきた。小学校低学年の生徒を中心に26人が射殺されたというのだから、米国民が衝撃を受けたのもうなずける。こういうニュースに接する都度、他国の人間は、「どうして米国では銃の所持を規制しないのだろうか」と首をひねるのだ。
こういう大規模な銃乱射事件以外にも、アメリカでは銃による不幸な事件が毎日のように起きている。
WOWOWの放映する番組の中に、救急病院を舞台にした「ER」というちょっと面白いシリーズものがある。ドラマでは、この病院に事故や急病でさまざまな男女が次々に運び込まれてくるのだが、その内訳を見ると、交通事故の被害者と並んで多いのが銃で撃たれた被害者なのである。
日本なら,年に一度か二度、新聞の社会面で大きく取り上げられるようなピストルによる射殺事件が、アメリカでは毎日のように起きているのだ。なかには、まだ、小学生にもならない子供が、父親の所持しているピストルを持ち出して遊んでいるうちに、弟を射殺してしまったというような事件もある。
そのアメリカでも、大きな銃の乱射事件が起きるたびに、銃の規制を求める声が起きる。この運動を推進しているのは、「リベラル」グループだが、彼らの運動は保守派による数の力で簡単につぶされてしまう。銃規制に反対する保守派の中核は、会員400万人を擁する「全米ライフル協会」で、豊富な資金を背景に積極的なロビー活動を行っているから、少数派のリベラルがいくら頑張っても運動は結局不発に終わってしまうのだ。
リベラル・グループは、主として大学に集まる学者や学生などのインテリによって構成されているから、彼らの発言はアメリカを代表する世論のように受け取られがちだ。だが、米国の保守的な大衆は、彼らインテリグループを蔑視する反面、ライフル協会の存在を畏怖している。だから、銃規制の可否について質問されると、アメリカ人の口は途端に重くなり、日本人に天皇制の可否について質問したときと同じような反応を示すのである。
顧みて日本に目を転じると、ここでもリベラルが少数派になっている。アメリカでは二大政党の一つ、民主党がリベラルの側に半歩身を寄せる姿勢を見せたりするけれども、日本の自民党も民主党も保守そのもので、両党の間に差異はほとんどない。今度の選挙前に続出した第三極政党なるものも、その政策は大体が保守的であり、与党も野党も第三極も、掲げている政策はみな似たり寄ったりなのだから、選挙民が誰に投票するか迷うのも当然だったのだ。
選挙の結果は、ついこの間まで続いていた自民党による一党支配を再現する形になった。リベラル勢力は、無きに等しいほど微弱な存在になり、日本は逆コースの路をとぼとぼと歩むことになった。南無阿弥陀仏。