甘口辛口

ビッグダディ離婚へ(1)

2013/3/21(木) 午後 4:38
ビッグダディ離婚へ

新聞を開いたら、「ビッグダディ離婚へ」という特集をしている女性週刊誌の広告が出ていた。それで、早速、家内にその週刊誌を買ってきてもらった。この年になると図太くなって、どんな本・雑誌でも平気で書店から購入できるようになっているけれども、女性週刊誌だけは別なのである。自分では、ちょっと買いにくいのである。

とにかく私は、「林下一家」の将来がどうなるのか、気になって仕方がないのだ。

ビッグダディこと林下清志さんが率いる大家族の運命を気にしているのは、私ばかりではない。だからこそ、テレビで放映されるビッグダディ・シリーズは、この種の番組の中では異例なくらいに長続きしているのだ。

では、人々にとって、林下家の運命がどうして、それほど気になるかといえば、林下さんの前妻が4男4女の子供たちを放置して一家を飛び出し、別の男のもとに走ったからだ。そのため、林下さんが超人的ながんばりで8人の子供たちを独力で育てなければならなくなったからだ。何しろ、前妻が出奔したとき、一番下の子供はまだ乳離れしていなかったのである。

林下さんは24歳の時、自分の治療院で働いている19歳の娘と結婚した。林下さんは整体師で、娘は彼の助手だったのである。若くして結婚した林下夫婦は、9年間で8人の子供の親になっている。妻は、9年間の結婚期間のうち、一年間を除いて、几帳面にも毎年子供を産みつづけていたのである。

出奔した前妻は別の男との間にも、女ばかり三人の「三つ子」を生んだが、男は子供が生まれると家に寄りつかなくなった。それで、彼女は女児たちを育てながら、新聞配達をして生活費を稼ぐことになった。新聞配達も大変だったが、彼女を悩ませたのは三つ子が年々母親の手に負えない悪ガキになっていくことだった。林下と一緒にいた頃は、夫が8人の子供たちを見事にコントロールしてくれていた。だが、彼女がその立場になってみると、三人の幼女は母親をなめてかかって、彼女のいうことを全く聞かない。

こうなれば、もはや恥を忍んででも、前の夫にすがるしかない。彼女はテレビでビッグダディ・シリーズを見ていた。それによれば、東北の地から奄美大島に移った林下一家は、みんな元気にやっているらしい。

前妻の通代は3人の女児を引き連れて奄美に乗り込んでみると、前夫も子供たちも歓迎してはくれなかったけれども、すぐに追い返すようなことはなかった。それに、母の顔を覚えていなかった下の二人の女児には、生母への恨みはなかった。だから、二人は物珍しげに寄ってきて、母のそばから離れようとしない。これに力を得て、前妻は、一旦、本土に戻ってから、それまでの住まいを畳んで、奄美に永住覚悟で、前夫の家に乗り込んできたのだった。

前妻の通代は、新婚の頃から物ぐさで、家事能力はゼロに近かった。年長の子供たちが小学校に通うようになっても、朝食を作ってやるのが面倒なので、登校前の彼らに飴を与えておいて自分は布団に戻って、もう一度寝てしまうというようなことをしていた。

テレビを見ていると、一家が野外キャンプに出かけるときに、彼女は飯ごうや鍋を持って行く代わりに電気炊飯器を持参するかと思うと、家では13人の家族に饂飩(うどん)を食べさせようとして、用意したのが素麺一束だけだったりするという、常識では考えられないようなことばかりしていた。

後妻の美奈子も通代と似たり寄ったりだった。

林下さんは、後妻について、こういっている。
「美奈はいいやつだけど、母親なのに母親として機能しない相手に対しては、俺は女として魅力を感じない」

近所の住民も、林下さんが離婚に踏み切ったのも無理はないと語っている。
「彼女は、確かに家のことをあまりやらないです。いくら子供がたくさんいるからって、もっと家をキレイにしたり、洗濯や畑の手入れも、もっとできるはずなのに……。
祭りのために自治会から去年の初夏に借りたハッピだって、今年の2月に催促されるまで返さないし。だから、はたから見ても、離婚するというのは納得できますよ」

前妻、後妻がそろって家事に無能だったり、子育てがうまくいかなかったりするのには、林下さんの側にも責任があるのではなかろうか。その点を考えてみよう。