甘口辛口

隠居の放談=虎の威を借りる狐

2009/12/17(木) 午後 5:53

      (石榴哄笑)


<隠居の放談=虎の威を借りる狐>


熊さん=この頃、鳩山首相の評判が落ちてきたね。だから、おいらは言っていたんだ、お坊ちゃんを担ぐのは止めとけってね。自民党は、安倍晋三や麻生太郎という二世のお坊ちゃんをかついで失敗した。民主党と来たら、それを間近に見ていながら、とびきりのお坊ちゃんを首相にするんだからなあ。

隠居=お坊ちゃんのどこが気に入らないんだい?

熊さん=女房に甘すぎるんだよ。安倍晋三や鳩山由紀夫が飛行機を降りてくるときの様子を見ろよ。幼稚園の生徒じゃあるまいし、これ見よがしに夫婦で手を握りあって降りて来やがる。奴らがお手々つないで得意そうな顔をしているのを見ると、虫酸が走るね。夫婦揃って頭の中身まで幼稚園児並みに見えてくる。

隠居=わしは、アレを見て夫婦円満で、結構なことだと思っていたがね。

熊さん=夫婦手を握りあって円満なところを見せつけるのは、きっと女房の発案なんだぜ。安部と鳩山の女房は、韓流ドラマが大好きだってさ。鳩山の女房なんか、韓国のイケメン俳優が来日するたびに、花束持って舞台に駆け上がって歓迎しているっていうじゃないか。国辱ものだぜ。

隠居=お坊ちゃんの共通点は、「世間」が怖いということなんだよ。だから、彼らは、まわりを気心の知れたお友達や自分に忠実な子分で固める。安倍晋三はお友達内閣を作って失敗したし、鳩山由紀夫も平野博文という副官的人物を官房長官に据えている。この平野官房長官が無能なくせに傲慢だと、ひどく評判が悪いんだ。伝えられるところでは、鳩山首相は一日の仕事を終えた後、余人を交えず、秘書官たちだけと会食しているそうだよ。

熊さん=それじゃ、外部からの声が入って来ないわけだな。

隠居=お坊ちゃんたちは、まわりを身内で固めても、まだ安心できない。結局、彼らが一番信頼できるのは奥さんなんだな。奥さんに甘くなるのも、仕方がないことなんだ。安倍晋三、鳩山由紀夫の夫人は、出しゃばりだというんで、あちこちで非難されているが、旦那が「世間」を怖がって尻込みするのを見ていたら、奥さんとしては、それをカバーしようとして、どうしたって出しゃばりになるんだ。

熊さん=鳩山首相の八方美人も、女房の影響かい?

隠居=その可能性は大いにあるね。女房族は身を守るために、敵を作るまい、皆にいい顔をしようとするヘキがあるからね。安部も鳩山も、女房頼みの生き方をしているうちに女性化してしまったんだろう。

熊さん=なるほど。

隠居=リーダーの任務というのは、A案やらB案、その他いろんなプランが対立しているなかで、どれか一つを選択することなんだ。麻生太郎は、A案を選択しおいて、周囲から反対されると、すぐにB案に乗り換え、自分は最初からB案がいいと言っていたじゃないかと弁明することを繰り返していた。鳩山首相はA案を選ぶときにも、B案も捨てがたいのだがと、含みを持った言い方をする。選択者としての役割を果たしていないという点では、二人とも同じだが、鳩山の方が賢明といえるな。

熊さん=そんな情けない男を、海千山千の政治家が首相にかつぎあげるのはどうしてかなあ。

隠居=そこが日本人の不思議なところでね。政治家なんてのは、みんな生き馬の目を抜くようなこすっからい連中ばかりだよ。彼らは、互いに牽制しあって動きがとれなくなる。そこで、ここは当たり触りのないところで、名門のお坊ちゃんを担いでおこうという合意が生まれるんだね。

熊さん=みんなで担ぐ御神輿には、みばえのいい奴が選ばれるということかい?

隠居=そうなんだ。利口な人間は、見栄えのいい男を表面上のリーダーに押し上げておいて、その陰で采配を振るうのさ。戦後に「影の軍師」として活躍した三木武吉は、鳩山首相の祖父鳩山一郎を首相にして、その背後で実権を握っていたよ。中曽根内閣、宮沢内閣の二代にわたって活躍した後藤田正晴も、そんなタイプの政治家だったな。

熊さん=虎の威を借りる狐みたいだな。

隠居=虎の威を借りる狐といえば、最近、天皇と中国副主席の会見に横槍を入れた宮内庁長官がそれだな。わしは、小沢一郎という男は嫌いだが、この問題で宮内庁長官を叱りつけた彼の言い分には理があると思っているよ。

熊さん=なぜだい? 長官のところには、彼を支持する手紙が数千通届いているそうだぜ。

隠居=宮内庁長官は、天皇の権威を笠に政府の要求を拒否して自らの存在を誇示したかったんだよ。宮内庁と政府の間で意見の食い違いがあったとしても、ことは隣国の高官が絡む問題だから、内々に処理すべきだった。ところが、この件を長官の側からマスコミに流してしまったという。彼には前科があるんだ。天皇が皇太子に不快感を持っていることを、長官は伏せておくべきだった。にもかかわらず、彼は大々的に新聞記者を集めてこのことを公表してしまったんだ。問題を公表することを天皇自身が望んでいたとしても(その公算は大であるけれども)、長官は天皇を説得して思い止まらせ、彼が天皇の名代として皇太子に直談判すべきだったんだ。

熊さん=しかし天皇は一年間に80回も、国賓レベルの訪客の相手をしているそうだぜ。

隠居=外交官は、毎日のように接客業務をしているじゃないか。天皇の主たる仕事は、国民の代表として国賓を接受することだよ。熊さんは、美智子妃が嫁ぐ前に、正田家でどんな家族会議が開かれていたか、知っているかね。美智子妃の両親と兄弟姉妹が集まって、天皇家の将来や天皇夫妻が果たすべき仕事が何であるか、真剣に討議したと言われている。結論として、天皇夫妻は終身外交官であり、夫妻が行動をその範囲に留めておけば、革命が起きても処刑される心配はないということになったそうだ。

熊さん=終身外交官ねえ。

隠居=天皇には、国会の開会を宣言したり、首相や大臣を認証したり、いろいろな仕事があるが、それらの国事行為はほとんどすべて形式的なもので、ロボットでも出来ることだよ。唯一、ロボットとしてではなく、人間として天皇が行う意味ある行為は、外交官の仕事なんだ。

熊さん=でも、天皇は手術をしたあとだし、高齢だからなあ。

隠居=だったら、外交業務以外のロボットでも出来るような仕事を減らして、暇な時間を作ってあげればいい。或いは、皇太子を摂政にして、天皇は第一線を退くんだね。天皇が高齢で、しかも病弱だから、国賓を接受する回数を減らすというのは本末転倒の話だよ。

熊さん=そうだね。だが、「天皇のためを思って、政府の身勝手な要望を刈り込むのが私の役目だ」などと宮内庁長官が啖呵を切ると、拍手喝采する国民が多いからねえ。

隠居=忠君愛国の保守右派が消えてなくなること───これだけは、辛抱して待つしかないね、いずれ彼らが消滅することは確かだけれども。