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謎のスパイM(2)

2015/3/11(水) 午後 3:59
 謎のスパイM(2)
 スパイM、及び野坂参三スパイ説に関する情報を集めるために、以下の4冊を手に入れて目を通してみた。
 
 「闇の男・野坂参三の百年」
 「スパイ野坂参三追跡」
 「昭和史最大のスパイ・M」
 「暴虐スターリン」
 だが、完読したのは「暴虐スターリン」だけで、その他の本はまだ最後まで読んでいない。野坂参三が二重スパイどころか四重、五重のスパイだったらしいことは確からしいけれども、その全貌を掴むためには自分で年表を作成して事実をキチンと詰めて行かなければならない。スパイMについて調べようとすれば、戦前の日本共産党史を細部まで研究する必要がある。
 (まあ、ゆっくりやっていくしかないな)
 という結論に達して、参考資料として購入したスターリンに関する暴露本に目をやったら、これが当方の盲点を衝く内容を含んでいた。
 反共文書を読むと、スターリンはヒトラーに匹敵する殺戮者で、政敵を数百万人も粛正しており、この犠牲になった人命はヒトラーが処刑したユダヤ人の数に並ぶと強調している。共産党独裁のソ連で「政敵」といえば、共産党員以外にはあり得ないし共産党員になれるものは限られていたから、それを数百万人も処刑したら、党員は国内に一人もいなくなってしまうはずだ。
 事実は、こういうことだったらしい。
 スターリンは全国の共産党支部に党内左派・党内右派などの反主流派だけでなく、反共主義者や集団農場に反対する旧富農の名前を書き出して本部に報告するように求め、このうちの重罪者グループを支部が射殺することを認可したのだった。この許可を得て、地方はそれぞれ独自に処刑を実行したのである。
 それにしても処刑されたものが数十万人に達していることは事実らしく、ここにスターリンの冷酷な性格が明らかになっている。スターリンは神学校の学生で、司祭になる一歩手前でマルクス主義の洗礼を受け学校を退学している。革命運動の地方指導者になってからは、目的のためには手段を選ばない流儀を貫き、運動資金を得るために平然と銀行強盗を働き、売春宿を開いている。スターリンは売春宿に雇い入れた娼婦には、客の払った代金の一割しか与えなかったという。
 こういう男だから、第二次世界大戦後にドイツ軍・日本軍の捕虜を酷寒のシベリアに送り、強制労働に従事させたり、東欧諸国を衛星国にし、千島列島を自国領に編入したのである。個人生活でも、3人の妻と相継いで結婚し、そのうちの一人を毒殺している。彼は寝室に呼び入れた女秘書と妻の面前でセックスすることを好んだという。
 独裁者は、暴走を始めたら留まることを知らない。それは、オウム真理教の麻原のような人物でも変わりはないし、一強多弱の政局をバックに議場でヤジを飛ばした安倍晋三のような人物でも変わりはない。そして、こういう独裁者の懐に入るには、野坂参三のようなパーソナリティーが必要らしいのである。
 (つづく)