亀田(兄)の勝利を報じる新聞記事には、「まれに見る地元判定」というタイトルがついていた。ボクシングの試合には、「ホームタウン・デシジョン」と呼ばれる地元選手に有利な判定を下す悪習があり、亀田の試合はその典型的なケースだというのだ。
私は結果だけ知ろために、最終ラウンドのあたりからTVをつけたのだが、試合が終わり判定を待つ場面で「あれれ」と思った。亀田の父親は、瞼を切って出血している息子の傷跡を大型タオルで拭き取っているのだ。タオルの表面にはでこぼこの突起があるから、そんなもので拭いたら、傷は拡がるばかりなのだ。実際、出血は止まらず、父親は繰り返しタオルで血をぬぐい取っていた。
こういうときには、選手に付き添っている負傷対策担当のセカンドが、傷跡に血止めの薬を塗り込んでやらねばならない。ところが、亀田を取り巻くセカンドは、その家族で構成され、プロのセカンドはいないらしいのである。
判定が下ってチャンピオンになった亀田は、「この勝利によって、オヤジのボクシングが正しかったことを証明できた」という意味のことを語っていた。彼の言葉は、家族愛の発露としてなら受け入れられるけれども、今後のことを考えたら反省の余地がある。
所詮、亀田の父はシロウトなのである。これまでは、アマチュアなりの工夫や独創で子供達を一定のレベルまで引き上げることが出来たが、後はプロの手に委ねるべきではなかろうか。少なくとも、新チャンピオンになった亀田興毅だけは、自分の手から離してヨソの飯を食わせた方がいい。
身内の世界から放り出されたら、大口を叩いて反感を買うという亀田の悪癖もなくなるだろう。対戦相手のランダエタ選手も言っていたように、亀田のボクシングは「だだの子供のボクシング」であり、彼は人間としてもまだ子供なのである。