甘口辛口

続「麻生太郎の戦略」

2006/9/28(木) 午後 5:10
前回の「麻生太郎の戦略」は、組閣決定前の新聞記事を頭に置いて、「どうも、状況はこんなところらしいな」と組閣の背景を推測しながら書いた文章だった。一夜明けたら、新聞に組閣の内幕を特集した「週刊新潮」の広告が載っている。それに、「麻生太郎<空手形>になった幹事長ポスト」という項目が入っていたのだ。

それでバイクを飛ばして「週刊新潮」を買いに出かけた。読んでみると、安倍晋三は麻生太郎に幹事長のポストを匂わせていたどころではなかった。安倍は選挙の数日前に、「幹事長を引き受けて頂けますか」という電話を麻生にかけていたというのである。それに対して、麻生は、「頼まれれば引き受けざるを得ませんね」と承諾したという。

週刊誌の記事にどれだけの信憑性があるかわからない。まして、書いているのは、「週刊新潮」なのだ。

しかし、こうしたことは言える。組閣人事決定前に流れる情報には、為にするものが多くて信用できないが、決定後に流れる情報はかなり確度が高いという経験則から来る事実がある。だから、安倍が麻生に幹事長を約束したという内幕話は、ある程度、信用してもいいかもしれない。同様に、中川秀直が幹事長ポストに執着して、事前に「幹事長は中川に決まり」という情報を流したり、「幹事長にしてくれなければ、一切の役職を拒否する」と、それとなく安倍を脅迫したといような記事も本当かも知れない。

だが、特集のなかの、「麻生本人は、外相留任を望んでいた」という麻生側近の証言はあまり信用できない。もし麻生が幹事長就任を望んでいないとすれば、考えられる原因はただ一つ、来年の参議院選挙で自民党が敗北することを予想しているからだ。敗北の責任を取らされて経歴に傷がつくことを恐れているのである。

しかし外相に留任したら、麻生はそれ以上に難しい問題を背負い込まなければならないのだ。
安倍晋三は、拉致問題を外務省の業務から切り離して別機関に担当させようとしているから、外相は両者の調整に心を悩ますことになる。その上、懸案のアジア外交の立て直し問題でも、タカ派の安倍を頭に戴いていては、思うに任せないことも予想される。外相留任の命を受けた麻生太郎が、苦虫をかみつぶしたような顔をしていたというのも、よく理解できることなのである。

麻生は、河野洋平から河野グループを譲ると言われているらしい。今や政治家として正念場に立たされた彼が、今後、どういう行動に出るか、興味津々というところだ。

安倍晋三の組閣は、論功行賞型であり、お仲間集合型であるといわれる。気心の知れた仲間にかこまれ、褒められれば大いによろこんで、よいしょしてくれた者を登用したりする、こんなところに、安倍の苦労知らずの薄っぺらな性格がよくあらわれている。はてさて、安倍政権の今後は、どうなることやら。