昨日(7月8日夜)の「太田総理・秘書田中」という番組は、いろいろな点で興味深かった。
民放の政治討論番組には、「たけしのTVタックル」というようなものもある。これは業界で既に廃棄物扱いになっているハマコー・三宅というタレントを連れてきて野党攻撃の暴言を吐かせることを売り物にしている番組で、こんなものに出席する野党議員や評論家がいるとはとても信じられないほどだ。民主党の某議員などは、このハマコーの機嫌を取って、しきりに「浜田先生、浜田先生」と持ち上げているのだから開いた口がふさがらない。マスコミの役割は、権力に阿諛するのではなく、これを正面から批判するところにあるのだ。
「TVタックル」に比較すれば、「太田総理・秘書田中」は、権力批判の立場を捨てていないし、その時々のテーマの選び方にもエスプリが感じられる。今回のテーマは、「選挙後に連立したり、政党変えるの禁止!」というものだった。
面白かったのは、自民党・公明党の連立問題に関連して、自民党の議員が両党の共通点は9割あるといったのに対し、公明党の女性議員が、「いや、5割」と反対したことだった。彼女が共通点5割と反論したのは、会場から飛び出した政策面で両党が9割も一致しているのなら、いっそのこと合同すればいいではないかという意見を意識した為と思われる。しかし、この若い女性議員は、国家主義に反対すると明言していたのである。だから、共通点5割といったのは、彼女の本音なのかもしれなかった。
私はこの議員の発言を聞いて、救いを感じたのである。
日本の政治を見ていて一番問題なのは、政権交代がないことなのだ。諸悪の根源は、自民党の長期政権にあり、そしてこれに手を貸しているのが公明党なのである。公明党が自民党と手を組まなければ、日本はずっと以前に二大政党対立の時代へと切り替わっていた筈なのである。
水と油のように違っていた自民党と公明党が連立を組んだのは、公明党の自衛策だったらしい。というより、池田大作の保身のためだったといわれている。公明党が野党だった頃、この党を目の上の瘤のように感じていた自民党は、陰に陽に公明党いじめを続けた。そして、創価学会の会長だった池田大作を国会に喚問して、政治と宗教の関係などを追求しようとしたのだった。伝えられるところによれば、このとき池田会長はすっかり震え上がり、以後公明党は自民党への随順路線を歩むことになったというのである。
自民党と連立するようになっても、公明党の内部には戸田城聖以来の世界平和主義を守り続ける勢力があり、これが公党としての公明党への信頼感を支える基盤になっている。共通点5割と言い張った議員も、立党の精神に立ち戻って発言したのである。こういうメンバーを目にすると、公明党も捨てたものではないとホッとする。
R会をはじめ多くの仏教系宗教団体が旧体制擁護にまわり、自民党一辺倒の姿勢をとり続けているときに、創価学会だけが自民党に対して一応自主性を保っている。部外者としては、この点を多とすべきかもしれない。
討論が終わって、「太田総理」の政策の可否を問う投票が行われる。
結果は、賛成12票,反対13票で提案は否決された。だが、視聴者による投票の結果は、逆に太田総理の提案を90パーセントという圧倒的多数で支持していたのである。討論会に出席した議員・評論家・有識者と、一般国民との間には、相当な意見の開きがあるのだ。この辺も、大変興味のあるところだった。政治の世界に通暁したプロにとっては、選挙後の議員の離合集散はやむを得ない現象なのである。しかし国民は、けっしてそうは思っていないのだ。