甘口辛口

隠居の時事放談

2007/7/9(月) 午後 6:08
熊─いよいよ、参議院選挙がはじまるなあ。ご隠居の予想を、聞かしてもらいてえな。

隠居─わしの予想より、熊さんの意見を聞きたいね。この間の都知事選挙の結果を、アン   タはちゃんと予想していたそうじゃないか。

熊─おいらは、人相を見て予想するんだ。石原慎太郎は長顔で、浅野候補は丸顔だわね。  東京都民は、昔から長顔が好きなんだよ。石原慎太郎は、以前に都知事選で美濃部亮  吉に負けたけど、顔を比べてみりゃ、美濃部の顔の方がもっと長かったんだ。

隠居─するてえと、安倍晋三は長顔で、小沢一郎は丸顔だから、自民が勝つというんだな  。

熊─まあね。丸顔は八方美人で、あちこちに気を使って物をいうから、どうしても迫力に  欠けらあね。そこへいくと、長顔は思ったことをまっすぐにいう。だから、何となく  、力強い感じがするんだ。

隠居─成る程な。美濃部・石原が争ったときには、美濃部は福祉一本槍ですっきりしてい   たが、石原はごちゃごちゃ屁理屈をこねていたからなあ。でもな、長顔にも欠点は   あるだろう?

熊─長顔のまずいところは、人間が冷めてえところでね。自分の気に入った相手にはやさ  しい顔を見せるが、それ以外のものには冷酷なんだ。安倍首相は、近頃の生徒達が規  律に従わなくなり、学力も落ちてきたから教育を改革するという。つまり、彼は優等  生タイプのいい子ちゃんが好きなんだな。そういう生徒の集まる学校には金をだす   が 、落第生の集まる学校へは予算を削るというんだ、ひでえ話だよ。

隠居─安倍首相が、日本中の生徒をお行儀のいい子どもに仕立て上げようとするのは何故   かというとね、奴に子どもがいないからさ。わが子を手塩にかけて育ててみれば、   子どもというものがどんなものか分かる。子どもなんてえものは、そもそも腕白で   お転婆なものなんだ。それが本来のものなんだよ。子どもを育てたことのない大人   は、そこんとこがわかっていない。それで、おとなしくて行儀のいい子どもにばか   り、目を掛ける。

熊─へえ、安倍首相には、子どもがいねえのか。飛行機を降りるときに夫婦で手を繋いだ  り、新聞の一ページ広告に二人で出たりするのはそのためなんだな。

隠居─子どものいない大人には二つのタイプがあるんだ。一つは、子どもを本当に大事に   して、実の親以上に子どものことを気遣うタイプだ。もう一つは、もっと子どもを   厳しくしつけろといって親や教師の怠慢を責めるタイプでね、この型の人間はほん   とは子どもなんて好きじゃないんだよ。安倍首相は、あとの方のタイプだね。

熊─それに、首相は、いいとこのお坊ちゃんだしね。

隠居─問題はそれさ。奴は政治的に名門の家に生まれ、祖父や親だけでなく、その取り巻   き達に囲まれて育ってきた。彼は、まわりの大人達が自分に何を望んでいるか、大   人と話をするとき自分がどんな返事をすれば相手が喜ぶか知っていた。それで、彼   はその時々に相手の喜びそうなことを確信ありげに語る癖がついたんだ。だから彼   のいうことは何時も見せかけだけで、中味が何もないのさ。

熊─しかし、拉致問題には、真剣に取り組んでいるじゃないか。

隠居─それも口だけだな。この問題で首相と話し合ったライス国務長官は、首相に愛想を   尽かしたそうだよ。

熊─どうしてだね?

隠居─具体的な対策を何も持っていなかったからさ。拉致された者を全員引き渡させるこ   とは、死んだ者もいるだろうから不可能だね。としたら、どの程度の所で折り合う   決めておかなければならない。そして、それを目指して、外交的な努力を重ねる必   要がある。ところが、首相は拉致を非難するだけで、当面の目標やそこに至る段取   りを立てず、実際は何もしていない。拉致家族の事務局も、せめて首相が本気にな   って情報収集をしてくれたらといっているよ。

熊─でも、憲法改正には本気になっているように見えるけれど・・・・・

隠居─それも、本気になっているように見えるだけだよ。もし本気なら、憲法の何処をど   う変えたいのか、ハッキリ打ち出す筈じゃないか。一家の主人が、その気もないの   に家族に向かって「家を建てる」と言い続けるようなものだ。本当に家を建てる気   があるなら、まず土地を手に入れ、資金計画を立て、設計図を作るだろう。首相は   そうした具体的な段取りに踏み出さないで、口先だけで憲法改正を唱える。具体策   なしに拉致問題解決を呼号するのと同じやり方だよ。

熊─でも・・・・

隠居─安倍首相の政治的見識といっても、映画のセットみたいなものでね。「美しい国」   という看板を掛けた庭園がある。中に入ってみると、「教育再生」「憲法改正」    「格差是正」というような標札を掲げた邸宅がずらっと並んでいる。その扉を開け   ると、どれも皆中味がなくて空虚なんだ。大体、美しい国というスローガンそのも   のが少女趣味で嘘っぽいのだ。日本の将来について具体的なイメージを描き得ない   から、首相は恥ずかし気もなくこんな空疎な言葉を使うんだよ。

熊─するてえと、ご隠居は今度の参院選で自民党が負けると思ってるんで?

隠居─それは何とも言えないな。日本人というのは、悲しい民族でね。貧しいことでは指   折りの沖縄や北海道で、自民党の知事が当選する。政府に政策転換を要求する代わ   りに、これに頼ろうとするんだな。権力批判を展開しなければならないマスコミも   政府にしっぽを振るしね。参院選で与野党逆転させるには、熊さんの説に従って、   民主党の代表に安倍首相より顔の長い男を探してくるしかないかもしれないな。