隠居─熊さん、どうしたね。顔にミミズ腫れが出来てるじゃないか。さては、カミさんと一戦をやらかしたね。
熊─あんまり腹が立つから、かかアの横っ面を張り飛ばしてやったら、反撃されてね。熊手みてえな手で引っかかれちまった。
隠居─喧嘩の元は、なんだい?
熊─いやね、かかアが、あんまり安倍首相の肩をもちゃがるんでね。安倍晋三と小沢一郎のどっちが首相にふさわしいかという話になったら、かかアの奴が、そりゃ断然安倍晋三だと言い張るんだ。
隠居─おや、熊さんだって安倍晋三を支持していたんじゃなかったのかね。
熊─以前はね。しかし、この頃の安倍晋三は、調子に乗りすぎているから気にいらねえんだ。テレビに出て臆面もなしに、私と小沢一郎のどっちが首相にふさわしいと思うかなどと質問して、自分に決まってるだろうと鼻をうごめかせていやがる。そりゃ、安倍晋三の方が見栄えはいいやね。小沢一郎は泥亀みてえなご面相だが、安倍の方はすらっとして、まあハンサムな方だしね。かかアは、あの泥亀が、いや小沢一郎なんかが首相になったら、外国の人に恥ずかしいとぬかしゃがる。
隠居─安倍晋三が調子づいていることは確かだな。テレビ討論なんかで、「私の内閣が、必ず実行します」とかなんとか、「私の内閣」「私の内閣」と連呼している。
熊─おいらだけじゃないよ。新聞を見たら、安倍首相が嫌いになったってのが45パーセントもいるそうじゃないか。
隠居─彼はお坊ちゃん育ちで、幼稚なんだよ。ちょっと人気が出れば、すぐ鼻を高くして横柄な態度を取るが、風向きが変わると、途端にしゅんとなる。そして、先生に叱られた小学生が、悪いのはボクだけじゃない、AクンやBクンはもっと悪いと告げ口するような調子で弁解する。年金問題の責任を菅直人に押しつけたと思ったら、松岡大臣・赤城大臣の事務所費問題が起きると、小沢一郎も同じことをやっていると責任転嫁する。それだけじゃないよ、松岡農水相が自殺したあとで、彼は「松岡は訴追の対象になっていなかった」などと司法権を自分が管掌しているようなことをいっている。これは三権分立の原則を無視した暴論で、絶対に許すことが出来ないね。
熊─ご隠居は、昔から安倍晋三が嫌いだったからなあ。
隠居─安倍のような薄っぺらな政治家のまわりには、きまって同じように薄っぺらな学者・評論家が集まってきてブレーンを形成する。そして、憲法改正だの教育再生などと危険な火遊びをはじめる。すると、知能指数の足りない議員がぞろぞろとその後に続いて安倍グループができあがる。
熊─安倍グループは、烏合の衆というわけだね。
隠居─そうさ、安倍内閣の閣僚がまるで競争するみたいに失言を繰り返しているだろ。いかに安倍グループがお粗末か、ということだよ。こういう徒党に国政をゆだねたら大変なことになるてんで、立花隆などは安倍晋三に対して宣戦布告をしたんだ。立花隆に限らず、まともな頭を持った人間は口にこそ出さないが、みんな心の中で安倍に宣戦布告をしているんだよ。
熊─ご隠居は、公明党が自民党と連立を組まなければ、もっと早くから二大政党時代になっていた筈だと言ってたね。公明党が自民党にくっついたのは、池田会長が指示したからかね。
隠居─そうだろうね。でも、公明党には、昔から会長の指示を受け入れるような素地があってね、先日の新聞に政党に対する好感度調査というのが載っていて、面白かったよ。自民党員は、もともと共産党と公明党が嫌いだから、公明党と連立を組むようになっても公明党に完全に心を許していないんだな。ところが、公明党の支持者は、つまり創価学会の会員は、総じて自民党に好感情を寄せている。だから、この両党の関係は、公明党側の片思いだともいわれているんだよ。共産党員は自民党を嫌い、反権力の姿勢を取っているが、公明党は池田会長も創価学会員も権力に敵対するような情念を持っていない。彼らが念じているのは、現世利益だからね。自民党員と違っているところは、個人プレーで自分だけ成功しようとするんじゃなく、仲間と一緒に繁栄しようと考えているところなんだ。
熊─成る程、創価学会員が一致団結するのは、そのせいだな。しかし、そりゃ悪いことじゃないだろ?
隠居─でも、身内だけで助け合いをされたんではなあ。芸能界にも創価学会の会員が多くて、彼らは互いに助け合って活躍しているそうだよ。だが、あんまりそれが露骨になると他のものはいい気がしないわな。
熊─民主党に対する好感度はどうだね?
隠居─安倍自民と小沢民主は、互いに「負け比べ」をしているという評論家がいるよ。今度の参院選挙の結果、野党が小差で勝ったら、自民は民主党から議員を引き抜いて数合わせをするといわれる。政界通の間では、その議員の名前まで明らかになっているんだ。民主党という箱の中には、そういう「腐ったリンゴ」が混じっているんだよ。民主党の人気が、もう一つ盛り上がらないのは、こういう弱みを抱えているからさ。新党日本を脱退した議員も、自民党への復党をねらっているといわれる。小池百合子のように計算高い議員が、まだ、あちこちにいるということだね。そんな奴らをのさばらせておいちゃ、いけないな。
熊─全くだ。
隠居─今度の選挙で、二大政党対立の流れが生まれるかもしれない。そういう流れが出来たら、次は中選挙区制度の実現を目指して闘わなければね。
熊─えっ、まだ先があるのかい。
隠居─そうさ。最終的には、選挙制度そのものをなくしてしまうことだよ。