甘口辛口

ブログを読み返してみたら

2008/10/23(木) 午後 10:03

 (写真は「運命」の頁をコピーしたもの)

<ブログを読み返してみたら>


このブログを始める以前に計画していたのは、幸田露伴の「運命」を現代風に書き直すことと、王朝時代に材を取った物語を作ることだった。

露伴の「運命」を読んだのは、旧制中学の生徒だった頃である。中学生にしては妙にひねたものを読んでいたものだが、これはあの頃に、読む本が本当に少なかったからだ。それで、学校の図書室にあった露伴の作品や平賀源内の「風流志道軒伝」などを読んでいたのだ。

露伴の作品は、漢字だらけで抵抗があったが、そこを突き抜けると興味が湧いてきた。その面白さは、吉川英治の「三国志」など問題にならないほどだった。なかでも明朝の帝位をめぐる暗闘を描いた「運命」には、歴史の暗さのようなものが描かれていて、出色の出来映えだった。この記憶が強く残っていたから、「運命」を現代風に書き直して、ホームページに載せれば、パソコン通信で知り合った仲間も喜ぶだろうと考えたのだ。

そう思いつくと、私は早ばやとパソコン通信に予告を出し、近日、ホームページに「運命」の現代語訳を掲載すると約束した。ところが、実際に作業に取りかかってみると、次々に当用漢字表にない漢語が出てきて、その印字を探すだけでへとへとになってしまう。特にややこしいのが人名や地名で、生まれてこの方見たことのないような漢字がずらずら並んでいるので往生した(上掲の写真を参照されたし)。

打開の方法は一つしかなかった。物語の舞台を中央アジアのどこかへ持って行って、人名と地名をカタカナ表記に改めるか、さもなければ、いっそのこと架空の国を設定して、そこでの物語に変更するか──。

これに比べたら、王朝時代の物語の方はスムースに行きそうだった。題名は、ちょっと気取って、「ものぐさ太郎の告白」とでもしたらどうだろうか。ものぐさ太郎は、のらくら遊んでばかりいたので、往来で食べ物を乞うまでに落ちぶれる。そこまで落ちても、彼のものぐさは一向に直らない、恵んでもらった団子が道に転がり出ても、立ちあがって拾いに行くことをしない。

カラスがそれを狙って飛んで来ると、彼は寝そべったまま棒で追い払うのだ。それも面倒になった太郎は、陰陽道の術を使って団子を引き寄せたらどうだろうかと空想し始める──

この王朝物語は、孫に勧められてブログを始めたことで、日の目を見ることなく終わった。ホームページは放棄され、ブログへの書き込みをするだけなったからだ。しかし、最近、自分は一体ブログにどんなことを書いてきたのだろうかという疑問が生じて来たのである。

それで、過去のブログをとびとびに読み返してみたら、相当雑な書き方をしていることが判明した。あちこちにタイプミスがあり、まるで文章になっていないような部分もある。特に読みにくいのが作家や画家に関する続き物式の記事で、その大半は問題を提起したままで結論を出すまでにいたっていない。それでも、なかには身びいきの心情からか、自分でも少しばかり面白いなと思うものもあるにはあった(深沢七郎について書いたものなど)。

私は、これまで書いたものすべてについて修正することは出来ないけれども、せめて続き物だけでも手直しすべきではないかと思った。あれらをひとまとめにしてホームページに移し、文章だけでも改めておけば、時々は思い出して読み直し問題を深めて行く手がかりになるかも知れない。

ということで、今回、ホームページに「戯作と試論」という項目を作り、そこに9本の続き物を移しておいた。もし「ものぐさ太郎の告白」を書き上げることが出来たら(あまり自信はないけれども)、ここに載せる積もりでいる。
     ホームページは、https://amidado.jpn.org/kaze/exp/