もし戦争になったら
もし日本が戦争に巻き込まれたら、一番ひどいことになるのが若者たちであることは言うまでもない。何しろ、わが国は超高齢化社会で、戦場に送り込む日本人としては若年層しかないからだ。もし戦争が激化したら徴兵制で集めた若い男子だけでは足りず、娘子軍の編成をも考えなければならなくなるだろう。
若年層が兵隊に取られてしまったら、その労働力を中高年の男や女たちが埋めなければならない。ここで問題になるのが、わが国の食糧自給率の絶望的な低さなのだ。戦争になっても、日本は従来通り外国から食料を輸入しなければならないけれども、そのための船舶が軍事部門に転用されるとしたら、食料輸入のための船が不足する。こうなれば、太平洋戦争中の日本のように食料は配給制になり、家庭の主婦たちは不足する食糧を手に入れるために、仕事を休んで農村に買い出しにでかけなければならなくなる。
その農村で食料生産にあたっているのは現在でも高齢者が中心になっているから、農家でも、買い出しにやってくる主婦らの注文に十分に応じることができない。こうなると、小平義雄のような犯人が再び現れることが予想される。小平は米を売ってくれる農家を紹介してやると騙して、多数の女性を山林などに連れ込んで強姦死させている。
しかし核兵器の発達している現在では、国民が飢餓に瀕するというようなことは二次的な問題になる。日本は島国だから、敵軍も簡単に上陸できない。日本と同様に島国のイギリスには、ナポレオンもヒトラーも遂に上陸することが出来なかった。そのためヒトラーは、ロケットでロンドンを攻撃するという戦法を採用している。
戦争が始まれば相手国の日本に対する攻撃も、ロケットによるものが主体になると思われる。日本が参戦すれば、相手国は小型核兵器を搭載したロケットによる攻撃を、福岡・下関・神戸・大阪・名古屋・東京など日本の代表的な都市に浴びせかけてくる可能性が高い。こうなれば、広島と長崎の悲劇がわが国の主要都市のすべてに及ぶことになる。
こうした予想は、悲観的すぎるだろうか。
太平洋戦争が始まる前までは、日本がアメリカに戦いを挑むなどは夢物語だと思われていた。日本は航空機や軍艦を動かすガソリン・重油をアメリカから購入し、鋼鉄生産のための素材である屑鉄もアメリカから買っていたのだ。戦略物資の購入先だった米国を抜き打ちで攻撃するなど狂気の沙汰だったが、日本の軍部はその狂気の行動に出て、予想されていたように惨敗を喫したのであった。
少子高齢化時代の日本は、国民の年齢構成からいっても戦争が出来ない国になっている。おまけに日本は食料の自給も出来ないし、自国産の地下資源も持たない。戦争に巻き込まれたら、自滅に追い込まれる運命にある「平和国家」なのである。
その国が憲法9条を廃棄したら、どうなるか。
何時かテレビを見ていたら爆笑問題の太田光が、自民党の現幹事長石破茂と安全保障問題で論戦していた。長広舌を振るっていた石破が一度だけ太田光の質問にたじろいだことがある。
「そんなにいう以上、戦争が起きたら石破さんは率先して前線に出て行きますね」
平和論者を「反日」と呼ぶ政治家や右翼評論家は、では、わが身を犠牲にして日本のために戦う覚悟を持っているかと言えば、自身や自身の家族を戦場に送り込む気持ちをほとんど持っていない。彼らは、自身と自身の家族を括弧の中に入れて除外した上で、祖国のために戦えと、国民を鼓舞しているのである。この点は、右翼の若者たちも同じで、彼らは戦争になって初めて自分が何を言っていたかを悟ることになるのである。
日本国民は、安倍首相の口車に乗って平和憲法を放棄したらどんなことになるか、胸に手を当てて考えてみる必要がある。